#47 コックピット
砂の竜巻が消滅した頃、私達は森を抜けた。
幸いにも、目の前には飛行場があった。
「飛行場…てことはセトチか…」
私はルイ、センリ、ライラを連れて飛行場へと向かった。
飛行場内に入ると、航空機が二機あった。
大きな航空機ではないが、残されたベアーズロックが避難するには充分であった。
すると、航空機内から何者かが降りて来た。
「…サマー隊長!?」
「キリ?キリじゃないか!」
キリは私達の元へと駆け寄り、互いの無事を喜んだ。
しかし、アユやカエデが謎の変異種に襲われた事を知った。
私は何も言わず、キリを抱き締めた。
正直言えば柄ではない。しかし、もう時を戻せない以上、その時の無事を喜ぶしかない。次離れたら、またこうして話せるか分からないのだから。
「キリ、他の皆は知らないか?」
「実は…。」
キリの視線の方向には、陰に隠れるように何者かが体育座りでいた。
徐々に近付くと、次第にその表情は鮮明になった。
「…イケ。」
彼は一切視線を合わせようとはしなかった。
言わなくとも何かがあったのは明白だった。
「…サマー隊長、実は。」
キリは、イケに何があったかを話した。
「…そうか…ヤマが。」
ヤマが残酷な死を迎えた事、それはこの世界線が選んだ運命なのだ。
「エンドラが倒したベアを砂のベアとしよう。四天王が一体死んだ事で、他の四天王は私達を殺しに来るだろう。となればタイミングを見て、新たな土地へ避難すべきだ。この地に生き残っているホウジンゾクはほとんどいないだろう。もう残された数十名のベアーズロックしかいないんだ。」
長々と語る私の目をその場にいた全員が真剣な眼差しを向けていた。
もう悠長な事は言っていられない。
私達はもう闘うより、逃げる事を選択すべきなのだ。
生きる為に最善を尽くすしかない。
「誰か操縦出来る?」
手を挙げたのは、ライラだった。
コックピットに乗り込んだライラを私は後方から見つめていた。
「操縦資格持ってたんだ。」
「私が戦闘部隊にいる時にね。貴方が取れって言ったのよ。」
「知らない世界線の話は無し。」
ライラは慣れた手つきで様々なボタンやレバーに触れている。そして、一つのボタンを押すと、サイレンのような音が鳴り響いた。その音は何故か聞き覚えがあった。
「あれ?この音、何か聴いた事ある。」
「当たり前でしょ。避難用サイレンよ。これが聴こえた時、至急そこへ向かう決まりでしょ。」
「そうだっけ。」
「…貴方ここに居て良かったわね。」
このサイレンを鳴らし続けたまま、私達は一時間だけ待機する事とした。
一時間後、誰も来なかったとしても、私達は航空機で避難する。




