#45 四天王
俺達はシオナとオリカを埋葬した後、サマー隊長を先頭にはぐれないようまとまって歩き出した。
仲間の死が発覚した直後のせいか、空気は最悪だった。
だが、気を使って話をしようなんて思う奴はいなかった。
センリの言っていた通り、俺達は本当に死ぬ運命なのかもしれない。
「…でも…足掻くよ。」
無意識に発した言葉に、隣にいたセンリだけが頷いた。
「止まれっ!」
突如、サマー隊長が声を荒らげた。
前方をみると、黄土色の毛を纏ったベアが立ちはだかっていた。
「もしかして変異種!?」
「今更驚く事じゃないだろう。王のベアは、未だにベアを産み続けている。変異種が数匹連続で産まれる事だって有り得るんだ。」
ライラ女王の驚きにサマー隊長は冷静な言葉で返した。
「そうね、でも何か様子が変よ。」
エンドラ隊長の言葉に全員が刃を抜き、黄土色のベアを見た。
すると、黄土色のベアはこちらに指を向けた。
「お前達が先代を苦しめたホウジンゾクとか言う虫か。」
「総員直ちに戦闘態勢に入れ!いいか、出来るだけ離れないようにするんだ!」
サマー隊長の指示に全員が「了解!」と返答した。
そして、全員が羽根で飛び上がり、黄土色のベアを上空で囲むように輪になった。
「皆!同時に斬るよ!」
サマー隊長の合図で俺達は一斉にベアへと斬り掛かった。
黄土色のベアは粉々になった。
しかし、それは次第に砂へと変わったのだ。
「なんだこれ!?」
するとその砂は一箇所に一斉に集まり、それは徐々にベアの形へと変化した。
砂の模型が先程の黄土色のベアに戻るまでそう時間は掛からなかった。
「なるほど、それが貴方の能力って訳ですか。」
「これだけじゃないぜ。俺達四天王は先代なんかとは訳が違う。」
エンドラ隊長の問い掛けに答えた黄土色のベアは、聞き覚えのない【四天王】という言葉を出した。
「四天王?」
「そうさ。俺を含めた変異種三体が新たに作られた四天王と呼ばれているのさ。そして、ついさっき四体目の四天王が誕生したのだ!」
苦難の末、やっと倒した変異種。それよりも上回る四天王という存在に俺は嫌気がさした。
「さぁ、お前達の一番嫌がる事をしてやる!」
黄土色のベアは右手を大きく振りかぶり、それによって舞った砂が大きな渦を作り出した。次第にそれは竜巻へと化した。
「…まずいですわね。」
エンドラ隊長の言葉にサマー隊長は頭を抱えた。
「全員撤退!可能な限り逃げ切るんだ!」
やむを得ず出した指示、俺達は従う事しか出来なかった。
「でも隊長!全員離れ離れになってしまいます!」
「まずは生き残る事が最優先だ。あの竜巻に巻き込まれて命が残る確率はどれだけあると思う。巻き込まて吹き飛ばされるだけならまだマシ。どれだけの勢いかも分からないんだ。どんな攻撃であれ、未知が一番恐ろしいのさ。分かったらさっさと逃げろ。」
センリは渋々その場から飛び立った。
「あぁん?お前は逃げないのか?」
竜巻から少し距離は出来た。僕は上空から先程の位置を見るように振り返った。
「エンドラッ!」
「サマー、此処は私に任せてくださいません?」
そこにはまだ、サマー隊長とエンドラ隊長が残っていた。エンドラ隊長の手をサマー隊長が強く引いていた。しかし、エンドラ隊長はその場から動こうとはしなかった。
「ルイ!どうしたの?」
上空で駆け寄るセンリとライラ女王。
僕は無言でサマー隊長達の方向を指した。
「…エンドラ隊長…何で。」
「…エンドラ…まさか。」
二人は何かを知っているような反応を示した。
何も知らない僕は、ただ見ていることしか出来なかった。




