#44 逆らえない運命
バチバチッと焚き火が音を立てる。
燃え盛る炎を四人で囲み、一言話さず夜空を見上げていた。
「…俺達、この先どうなっちまうんだろうな。」
俺は思わず、心中の言葉を発した。
「このままだと間違いなく全員死ぬでしょうね。」
何の躊躇いもなく、センリは死を宣告した。
「…お前さぁ、もう少し宥められないわけ?」
「死なないと断言出来る?私はかなり絶望的な状況だと思ってるけど?」
「あぁ!そうですよ!」
俺が声を荒らげても、センリは一切の動揺を見せずにいた。
それはシオナやオリカも同じだった。
「…皆、どうしてるんだろ。」
溜息混じりに呟いた言葉に三人は反応した。
しかし、一瞬こちらを向いただけで、すぐにまた炎を見つめ直した。
「はいはい、邪魔者はもう寝ますよ。どうせ死ぬなら今くらい明るくいようぜ。何でお通夜並に静かなんだよ。」
去り際に愚痴を零しながら、俺は大きな木の隙間に入り込んだ。明るい内に中の木くずや虫を取り除き、専用の寝床を完成させておいたのだ。
すると、センリは木の上へと登り、オリカとシオナは草むらの中に隠れた。
───チームワークの欠片もねぇな。
俺は呆れながらも気を失うように目を閉じた。
陽の光が閉じた瞳の隙間に差し込み、俺はゆっくりと目を開けた。
ベアの襲撃も無く、無事に朝を迎えられたようだ。
木の隙間から顔を出すと、焚き火のあった位置にはセンリの姿しか無かった。
「…あれ?シオナとオリカは?」
俺の声に振り返ったセンリは、心做しか動揺しているように見えた。
「…起きたらもういなくて。」
「はぁ!?あいつら先に行きやがったな!」
不安そうに俺を見つめるセンリは、「どうする?」と問い掛けたいように見えた。
「後なんか追わないからな?形跡もなければ此処は迷いの森だ。どうなろうが自業自得だ。」
俺の言葉にセンリは、僅かに落ち込む表情を見せた。
「…一先ず王都サホロを目指そう。恐らく、皆同じ考えだろうからな。」
俺達は言葉を交わさず、再び森の奥へと歩みを進めた。
しかし、俺達が再開したのはシオナとオリカでは無かった。
「良かった!二人とも無事なのね!」
「サマー隊長にエンドラ隊長っ!それにライラ女王もご無事で何より!」
俺達は三人へと駆け寄った。
そして、再会の喜びの前に、シオナやオリカの事を伝えた。
「…そうか。こちらはセイラとはぐれてしまってな。まあ、今回ことはセイラに任せよう。なぁに大丈夫さ、あの二人はセイラの部下でもあるんだから。」
しかし、僕は何故か安心出来なかった。
信頼をしていない訳ではない。
何か起こってはいけない事が起こってしまうのではないか…そんな気がしただけだ。
そして、翌日…。
僕達は二人と再会した。
しかし、シオナとオリカは息をしていなかった。
二人仲良く、大きな木の下で頭をくっつけて亡くなっていた。
ベアによる目立った傷跡はない。
しかし、心臓の位置には刀のようなもので貫いた痕だけが残っていた。
誰も口にはしなかったが、間違いなく身内の犯行であった。
木の枝や葉を避けるように差し込む陽射しは、黄色に輝いていた。それに照らされた二人は、今まで一番綺麗に見えた。




