表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/42

#40 果てなき穹


僕は、猿のベアと交戦した。

しかし、産まれたばかりの変異種は呆気なかった。

手足を斬った途端、悶え苦しみ息絶えた。

時計城から長く降りて来なかったのは、ただの防衛本能だったのだろう。

問題なのは、狂のベアだ。

奴は本当に狂っている。

どんなに痛めつけても、傷付けても、一切動きが変わらない。

弱点である眼や首を斬っても、倒れるのは一瞬だけ。

更に斬った部位は浅ければすぐに戻ってしまう。つまり、狂のベアの能力は狂人な力と再生能力だったのだ。

つまり、勝つ為には弱点を見つける他無い。

この大きさのベアを野放しにしてしまうと、生き残ったホウジンゾクは永遠に苦しむ事になってしまう。

僕とイマ隊長は交互に攻撃を仕掛けるも、全く歯が立たない。

ついには、毒付刃までもが尽きてしまった。

万事休すとはこの事だ。

何も出来ないまま、僕とイマ隊長はボロボロの状態で座り込んだまま狂のベアを眺めていた。

狂のベアは、辺りを徘徊している。

その動きには理解できないが、何かしら意味を成すのだろうか。

もう立ち上がる力も残っていない。


「…命あるだけ…良かったと思うべきか?」

イマ隊長は唐突にといかけた。

「どう思うかは…人それぞれだと思います…でも…僕は生きてて良かったと…思えていますよ…。」

「…ベアーズロック新軍団長としてこれで良いのかと思ってな。せめて、爪痕くらい残さないとな。」

イマ隊長は苦痛表情を浮かべながら、立ち上がった。

「…何をする気です?」

「俺はこのまま…死ぬ訳にはいかない…」

イマ隊長は脚を引きづりながら狂のベアのいる方向へと向かった。

「…駄目ですよ…折角生きているんです…逃げましょう…奴を倒すのは無理なんですよっ!」

するとイマ隊長は、ニヤリと笑いながら振り返った。

「無理かどうかを決めるのは、俺次第だろ。」

野太い音を出しながら、イマ隊長は飛び立った。

低空飛行で落ちている毒付刃を手にし、狂のベアの後方へと回った。

「駄目ですって!死にますよっ!」

正直、僕も声を出すのが精一杯だ。

しかし、イマ隊長は、苦しみながら何度も何度も狂のベアの眼や首、足首を切り裂き続けていた。

すると、初めて狂のベアが膝を着いたのだ。

その瞬間、狂のベアは雄叫びを上げた。

そして、その大きく開口した喉奥を狙って、イマ隊長は狂のベアの口の中へと突っ込んだ。

「テイルッ!サマーや皆に宜しく伝えてくれッ!今までありがとうってなッ!」

そう言い残し、イマ隊長は姿を消した。

「…イマ…隊長ッ!」

その後、あまり時間は掛からなかった。

狂のベアは多量の血を吐き出し、その場に倒れ込んだ。

恐らく口の中だけでなく、食道や内臓までも隅から隅まで斬られたのだろう。

それはイマ隊長の力量だからこそ出来ること。

僕はショックのあまり、暫く呆然としていた。

「…誰がこんな結果を望むんだ。」

すると、倒れている狂のベアから何か音が聴こえた。


『ボコッボコッボコッボコッ』


よく聴くと、腹部の辺りから音が聴こえる。そして、音と同じタイミングで狂のベアの体内から何かが押し上げられているようにも見えた。

すると、腹部から鋸のような刃が貫通した。

それは大きく狂のベアの腹部を切り裂き、その刃の持ち主は姿を現した。


「…あなたって人は。」

僕は心のどこかで信じていた。

イマ隊長は、生きているのではないかと。

「…さぁテイル。親玉を狩りにいくぞ。」

全身血だらけで異臭を放っている。

それでも彼は、輝いて見えた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ