表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/42

#32 蛇


【ルタコ村】

私達は今、ルタコ村の港にいる。

ルタコ村は恐ろしい程に静かだ。

いや、正確に言えば、王都サホロを出てからやけに静かだった。

「…何か静かすぎません?」

エアちゃんは不安そうに話していた。

私は頷いて歩いていると急に地面の色が変わった。

大きな鍋で加熱でもしたのか、それ程の範囲で真っ黒に染まっていたのだ。

真っ黒な地面に触れるも、他の地面との温度は大差なかった。

「…一日以上は経過している。焚き火をしたにしては範囲が大きすぎる。考えられる可能性は何だろうか…それにやけに潮の匂いが強い。この位置では波もそれほど荒くはない。誰か海にでも飛び込んだか。」

私がブツブツと独り言を呟いていると、エアちゃんは再び不安そうな表情を向けた。

「もしかして、先程言っていたサマーさんがいたんじゃないですかね?」

私も丁度そう思っていた。だが、そのサマー隊長がいる気配が全くない。サマー隊長どころか、ベアの気配すら無い。

その後、私とエアちゃんは村の隅々まで見て回った。

しかし、何も見つかることは無かった。

「ここはハズレ。でもセイラさんの言っている事が本当なら、シャオタンに何かあるかもしれない。何なら、サマー隊長が居る事も有り得ますね。」



【シャオタン海岸】


「…こんな所に家が。」

僕は唖然とした。しかし、セイラさんは問答無用に家の扉を叩いた。

すると、ゆっくりと開いた扉の向こうに立っていたのは、サマー隊長だった。

「セイラ!?それにアキも!」

セイラさんは言葉を発さず、そのままサマー隊長に抱きついた。

サマー隊長も初めは戸惑っていたが、次第に受け入れていた。

「…でもなんで此処がわかったんだ?」

「正直賭けでした。前にイマ隊長が言っていた事を思い出しただけです。」

すると、サマー隊長の後ろから顔を覗かせたのはイマ隊長だった。

「…俺が何だって?」

何故だろう、イマ隊長を前にすると一度はビクッとなってしまう。それは僕だけでなく、セイラさんも同様らしい。

「…昔死に場所がどうとか話したじゃないですか。その時に出てきた場所がシャオタンだったんですよ。覚えてないんですか?」

「…覚えてない。そもそもそんな理由で居座ってない。」

聞いている限り偶然であり、幸運であっただけだった。

現にセイラさんは空いた口が塞がらず、サマー隊長はそれを見て口を手で押さえていた。

「…ぷッ……笑ってない…笑ってませんよ。」


───笑ってるよ。


「まあ何にせよ積もる話もあるだろう。」

イマ隊長の案内で僕とセイラさんは、家の中へと入った。


そして、僕とセイラさんはこれまでの状況について全て伝えた。当然、イマ隊長やサマー隊長の知らない事がほとんどで、二人は驚きを隠せずにいた。

「…やはりほとんどの隊員が死亡しているのか。変異種も三体いて、王都サホロはテイルが守っていると。」

「それに王のベアを倒さないと雑魚ベアの発生は止まらないのか。こりゃ中々難儀だね。」

サマー隊長は苦笑いをしていた。

すると、イマ隊長は立ち上がり、窓の外を眺めた。

「…イマ?」

「…考え過ぎであってほしいんだが」

イマ隊長は、一つの推測を語った。

「俺達が王都サホロを立つ時、知能のベアに襲撃を受けていた。雑魚ベアに囲まれて、それぞれが別方向に逃げていった。しかし、あの場を乗り切った者は全員深い森へと入ったんだ。森といっても、誰かと鉢合わせる可能性は高い。現に俺はサマーに会っているし、他の隊員も誰かしらには会えている。だが、一人だけ誰にも会っていない奴がいるんだよ。」

「…誰にも会ってない…それって。」

僕が聞き返すと、サマー隊長やセイラさんの表情は曇っていた。

「…そう。つまり、すぐに森から抜けたという事だ。迷いの森を抜けるのは難儀だが、頭が切れて嗅覚の強い奴なら容易い事だろう。」

「つまり、軍団長と知能のベアが相打ちするように仕向け、尚且つ雑魚ベアも撤退させた。さも自分が討伐したかのように。そうすれば、自身のアリバイが証明され、王都でのんびり過ごせた訳か。」

イマ隊長とサマー隊長の口調は、推測ではなくほぼ確信に変わっているような気がした。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!それって、テイルさんがベアの仲間だと言いたいんですか?」

「…落ち着け。絶対そうって訳じゃない。ただ可能性が高いという話だ。証拠だってある訳じゃない。」

すると、突然セイラさんが椅子から立ち上がった。

「…まずいかもしれません。」

「セイラ?」

セイラさんは、サマー隊長を見て口を開いた。

「テイル隊長、ヤマとイケにトマッコイへ行けと指示したんです。あそこはベアの多発地域。今の推測が当たっていたとしたら、彼等を始末する為に送り込んだんじゃないですか!?」

「何!?」

サマー隊長の一声でイマ隊長は立ち上がり身支度を始めた。

「二十秒で支度しろ。すぐに王都サホロへ向かうぞ。」

僕達は身支度を整えたイマ隊長とサマー隊長を連れられ、王都サホロへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ