#31 搜索
僕達が狂のベアと遭遇したのは、自然豊かな村として有名なロックルックストリーム。花が多く咲き、夜にはその花が光るのだ。
だが、その村も今となっては壊滅状態。
美しく咲いていた花も枯れ、燃えてしまった。
そんな状態の村に狂のベアが来た事で、更に自然は破壊されてしまった。
ルタコ村に向かう前、僕達は王都サホロに帰還する事とした。
門は完全に閉じている為、僕達は塀の上から王都へ入ったのだった。
「ベアーズロックだあああッ!ベアーズロックが帰ってきたぞぉぉぉッ!」
一人の国民の声で僕達はすぐに注目の的となった。
僕達全員を大勢の国民に囲われた。
「おい!一体何をしていたんだ!」
「どうせまた何も出来なかったんだろ!」
「誰が此処を守ってたと思ってんだ!」
僕達は大勢から罵声を浴びた。
確かに王都サホロは一切の被害を受けていない。
それに王都サホロの周りには、無数のベアがいたはずだ。それが何故…。
「おい来たぞ!道を開けろっ!」
国民は道を開け、誰かがこちらへと向かって来た。
「…良かった…皆無事ですね。」
そこに居たのは、ボロボロのな姿の男。
そして、彼は見覚えのある顔だった。
蛇のような目付き、避難民の頃を思い出させた。
「テイルさんじゃないですか!」
僕はテイルさんに駆け寄った。
テイルさんは、微笑みながら僕を迎えてくれた。
「その怪我…もしかしてサホロ周囲のベアは…」
「ハハッ…情けないですよ。雑魚ベア相手にこの始末です。」
「そんな事ありません!あんな数のベアを相手するなんて、テイルさんじゃなきゃ出来ません!」
テイルさんは優しく微笑んだ。あの頃の鋭い目付きが嘘のように、テイルさんの表情は優しさで包まれていた。
そして、テイルさんは僕の後ろの皆を見た。
「セイラ…サマーさんと一緒じゃないのかい?」
「…すみません。私達も探しているんです。」
「…そうですか。サホロにも情報は来ていません。何処かに身を潜めている可能性もありますが、当然もうこの世にいない可能性もあります。何か分かったら教えてください。ベアーズロックはもう壊滅寸前です、協力し合って乗り越えましょう。」
僕達全員、テイルさんの言葉に返事をした。
そんな中、何故かヤマの表情は暗かった。
「…ヤマ?」
声を掛けるもヤマは反応しなかった。
何故か視線はテイルさんにあった。
テイルさんの歓迎の言葉により、国民の罵声は落ち着いた。
そして、僕達は王都サホロの中心である、時計城に案内された。
僕達は今、膝を着いて女王様と対面している。
「お初にお目にかかります。私、二代目女王のライラと申します。ベアーズロック戦闘態勢の皆様、今日までご無事で居られたこと心より嬉しく思います。生き残られていた隊員も数名戻られたのですが、それもごくわずか。今や王都サホロも壊滅するのは時間の問題と思われます。」
こんな状況であっても、女王様は落ち着いていた。
「戦闘部隊の皆様に頼ってばかりで申し訳ないのですが、我々にはどうすることもできません。皆様を責める民をお許しください。ですが、戦闘部隊の皆様にはベアの討伐を続行して頂きたく思っています。現在得ている情報より、残る変異種は三体。まずは王のベアを討伐し、雑魚ベアの繁殖を止めるのです。」
僕達に反論する権利は無い。
女王様の言葉に僕達は、「はっ!」とだけ返事した。
「…必ず生きて帰ってきてください。」
「はいっ!」
僕達は、三グループに別れて二つのミッションを設けた。
一つは、サマー隊長や生き残っている隊員の捜索。
二つ目は、変異種の捜索件討伐だ。
僕とセイラさんは、シャオタンへ。
エアとキリは、ルタコへ。
ヤマとイケは、トマッコイへ向かう事となった。
「トマッコイにサマーがいるとは考えにくい。だがトマッコイは、ベアの多発地域と言われている。腕のある二人に何かないか搜索を頼みたい。」
テイルさんの指示の元、俺達は各方面へ出発した。
しかし、一瞬ヤマに腕を掴まれた。
「アキ、テイル隊長の事なんだが。」
ヤマの表情は、何かとんでもない事を抱えているような様子であった。いや、感じたというのが正解だろうか。
「…ヤマ?どうしたんだ?」
「…いや…気を付けてくれ。」
僕はシャオタンに着くまでの間、ヤマの言葉の意味を考え続けた。




