表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/42

#29 反撃の準備


ここは、シャオタン海岸。

ルタコ村より更に西に進んだ所に位置する。

特別何かがあるかと言われるとそうではない。

何故、イマは此処に来ようとしたのか。

私には分からなかった。


下を覗き込むとザザーンッと強い波が岸壁に打ち付けられている。

本日は曇天のせいか、波も荒れ気味だ。

快晴の日に来れば、ここも絶景なのだろう。

そんな景色をイマが眺め初めてから、三十分は経過しただろうか。

何も言わない時間が過ぎていく。


「イマ、そろそろ教えてくれても良くないか?」

私はしびれを切らして問い掛けた。

「…着いて来い。」

イマは溜息を吐きながら移動した。

崖とは反対方向に山を下っていく階段がある。

下った先は、岩場だらけになっている。

イマは波の打ち付けられるタイミングを見ながら、一つずつ渡って行く。

「…飛べばいいのに。」

私は羽根を動かして着いて行った。

最後の岩場からイマも羽根を動かし、隠れた洞窟へと入って行った。

その後を着いて行くと、その洞窟は蒼く輝いていた。

反対にも洞窟が繋がっており、その明かりで海の青色が反射しているのだろう。

「…なんて美しい洞窟なんだ。」

私は感動のあまり、目を輝かせてしまった。

「…自然が作り出したこんなに素敵な洞窟も、ベアによっていつかは壊されてしまうんだ。だから俺は、この地の自然を守りたい。その為には何をしたら良いか、ベアを討伐するしか道は無い。」

イマの表情は、段々と険しくなった。

「…サマー、俺は闘い続ける。ベアーズロック戦闘部隊が無くても、やって行けるはずだ。」

「…それで?私にどうしろと?」

「…手を貸して欲しい。このシャオタンで暮らし、ベアを討伐して行く。」

「手を貸すのは良いとして、何故シャオタンなんだ?」

するとイマは、荒波を指さした。

「ここは快晴でも波が荒れている。ここから落とせば二度と上がって来る事はできない。他の海沿いでは出来ない事だからな。」

「なるほどね。でも私達の生活はどうするのさ。衣食住が揃ってる訳じゃないだろ?」

私の言葉に反応せず、イマはある方向へと進んだ。私も何も言わずに後を追った。辿り着いた先には、ボロボロの古民家があった。中は埃まみれで、広めのワンルームといったところか。木は朽ちている為、所々隙間風が入っていた。時々舞う埃が鬱陶しく感じ、私は全ての窓を開けた。

「何年か前から非常食や衣類、必要最低限の生活用品は揃えてある。当然、ベッドも置いてあるし、温水蛇口付きだ。」

「…昔から時々姿が見えなかったのはこれだったのか。」

私がベアーズロック在籍時、何度かイマの姿が見えなかった時があった。

時に気にしてもいなかったのだが、数年越しに辻褄が合い、小さな謎が解決した気分だ。

「まあな、万が一の事も考えていた。まさか本当にこうなるとは思ってなかったがな。」

「…わかった。私はあんたに協力する。勿論、アキやセイラの捜索も手伝ってもらうよ。あいつらはまだ王都サホロの周辺を彷徨いているはずだからね。」

イマは静かに頷いた。

「他の生き残っている仲間達も探すぞ。馬鹿正直に交戦するのはもうやめだ。ベアーズロック戦闘部隊は、生存者だけで受け継ぐ。過去の栄光に浸っている暇は無い、今はとにかく協力しあうべきだ。サマー、俺達がまた作るんだ。新しいベアーズロックを。」

珍しく饒舌で熱い思いを語ったイマ。

私は改めて、流石だと思わされた。

私達は再び手を取り合った。


「さぁ、反撃の準備だ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ