#27 復讐の鳥
現在、ベアーズロック戦闘部隊の生存者数は不明だ。
それにひきかえ、ベアは増え続ける一方。
これでは、何人ものホウジンゾクが生まれたとしてもキリがない。
ホウジンゾクとベアの戦争はいつまで続くのだろう。
闘わなければ死が待っている。
そんなストレスの減らない毎日、もう俺は疲れてしまった。
自害だって考えたさ。
だが、出来なかった。
所詮俺は臆病者、首を縊る事も出来ないのさ。
だけど、アキ達が闘っているのに、俺は逃げていて良いのか?
───仇を討とうと約束したのは俺じゃないか。
なぜ弱気になっている。油断や隙を見せたら終わりだぞ。
俺は誰だ?ダンカンだ。
子供達を守るのは俺の仕事だ。
待っていろ、アキ。
今助けに行くからな。
…だけど。
一つ不可解な点がある。
俺は何故、空を飛べているのだろうか。
それにこの飛び方に目の位置。
まるで人間じゃないみたいだ。
でも、人間の時より身体は軽い。
俺は一体、どうしちまったんだ。
上空から見下ろすと、この土地は既に終わりなのだと悟らされる。
村や森は破壊され、無数のベアで溢れ返っている。
この中で生き残っているベアーズロック戦闘部隊は、一体何人いるのだろうか。それ以前に、ホウジンゾクの生存者は何人いるのだろう。
王都サホロは、門を突破されない限り大丈夫そうだ。
────ん?あいつは…。
俺は上空から勢い良く降下した。
血眼になる程に奴を探した。
復讐の為だけにだ。
俺は勢い良く、そのベアに体当たりした。
身体は小さいが、降下したお陰でそのベアはやや蕩けた。
「痛てて…何なのぉ?」
振り向いたそのベアは、この二年間探し続けたそいつだった。
「あら!貴方は!久しぶりじゃないの!」
───は?何言ってるんだこいつ?
俺はベアの言っている意味が分からなかった。
「私よ覚えている?擬態のベアよ。」
どうやらこいつは、コピーは出来るが擬態のベアという記憶もしっかり残っているらしい。
「…もう、忘れちゃったの?仕方ないわね。」
────擬態のベアと名乗っている以上、俺をダンカンだとは思っていないようだ。それじゃあ、誰と勘違いしているんだこいつは…。
「どうやら生き残っている能力者は、私と貴方含めて四体くらいみたいよ。皆、あのホウジンゾクとやらにやられちゃったのね。小さい身体なのにほんと厄介よね。」
────やはりそうだ。こいつ、俺をホウジンゾクとは思ってない…え?能力者?
俺は翼を降ろし、自分の身体を見た。
────!?なんだこれ!?
「…ねぇ、天ちゃん大丈夫?」
────て、天ちゃんってなんだ!?
「…もしかして記憶喪失!?」
俺は、何故こんな姿になっているのか分からなかった。
まさか、憎んでいる奴等と同じ姿になっているなんて。
「貴方は天のベアなのよ?覚えてないの?」
どうやら、俺は…。
知らぬ間に天のベアとやらになってしまっていたらしい。
「…俺は…違う…ベアなんかじゃ…。」
「大丈夫…落ち着いて。」
擬態のベアは俺に抱き着いてきた。
「違うんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」




