#22 千里の道も一歩から
「…くっ。」
私は、かつての仲間を殺めてしまった。
私の本来の職務は、ベアの討伐。
ホウジンゾクを殺めてしまえば、どんな理由だろうと罰を受けることになる。
──嫌っ、地下帝国行きだけはごめんよ。
そう心で叫び続け、私は傷を押さえながら罪を逃れる方法を模索していた。
しかし、どんな理由を添えても、絶対に不可解な点が出てくる。
「だって仕方ないじゃないっ!シオナもオリカも裏切り者なんだからっ!サマー隊長に着いて行ったのが悪いのよっ!私を置いて、行ったのが…。」
私は、言い訳をする自分が惨めで仕方がなかった。
「随分と大きな独り言ですね。ベアが集まって来てしまいますよ?」
私は、背後に刃を向け、戦闘態勢となった。
「シオナとオリカを殺したんですか?」
「…だったら?同じ裏切り者同士、敵を討つって言うの?元側近のセイラさん。」
セイラさんは表情を変えず、刃を抜いた。
相変わらずの美しさ。
彼女こそ、私が戦闘部隊に入った理由。
「いいえ。私達は裏切り者です。遅かれ早かれ始末されるのです。」
しかし、セイラさんは歩みを止めなかった。
「でもね、センリさん。私達が裏切り者である事と今回の話は別です。どんな理由があっても、裁判を通していなければ、貴方はホウジンゾク殺しなの。それを見過ごす事は出来ない。」
「く、来るなあぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
私はセイラさんに刃を向けた。
しかし、セイラさんは高く舞い上がった。
それはもう美しく、蝶のようであった。
「…ごめんなさい。これで私も犯罪者。でも安心して、貴方の罪は私が受け継ぐから。貴方は安心して眠りについて。」
気がついた時には、セイラさんの胸で抱かれていた。
────私、セイラさんに斬られたの?あれ?痛み…感じない…。
セイラさんの言葉は暖かく、優しく、心地よかった…。
────センリ。
「素敵な名前ね。」
「ありがとうございます。憧れのセイラさんにそう言われて有り難き幸せ。」
「ふふっ大袈裟よ。」
「本当ですよ!…私の名前、母が好きな古くから伝わることわざから付けてくれたんです。千里の道も一歩からって。」
「センリ、貴方はきっと素敵な人になるわ。」
────。
「…ははっ…これが走馬灯ってやつなのかな…。」
私は、大好きなセイラさんの胸の中で目を閉じた。




