#16 最後の雄叫び
軍団長に続き、ベアーズロック戦闘部隊は、ベアの群れへと突撃した。
軍団長や各隊長は群れたベアを颯爽と討伐し、先へと進んだ。優れた隊員も次々と討伐し、後へと続いた。
「ああああああああぁぁぁッ!!!」
力の無い戦闘隊員は目の前でベアの食事となり、あちらこちらで断末魔が響き渡っていた。
「…貴様が今回の司令塔か!」
軍団長の言葉に黒い毛と所々にスカイブルーの色を纏ったベアがケラケラと笑いだした。
「まあ確かにそうですね。この場では私が司令塔になるのかな。どうやら貴方も軍を束ねているみたいですね。どうです?私と闘ってみますか?」
──こいつは俺を舐めている。
俺の脳の血管ははち切れそうになった。
「舐めるなぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
勢いよく抜いた刃をベアは軽々と受け止めた。
「そうでなくっちゃっ!!!」
軍団長がスカイブルーのベアと戦闘を開始した時、一番帯、三番帯、五番隊はそれぞれ違う方向へと飛び立った。
「各部隊全員に告ぐ!ここから先は命の保障はない!軍団長の指示が無い今、己に出来る事をやり遂げろ!何としても民を守るんだ!それがホウジンゾクだ!」
イマ隊長の命令に全隊員が「ハッ!」と声を揃えた。
そこら中にいるベアを倒しながら、各部隊は羽根を休まずに進行した。
「森だッ!森に突入する!全隊員、健闘を祈る!」
これが、イマ隊長の最後の指令となった。
森が深く距離が出来ると、ホウジンゾクの通信に障害が生じる。
ここからは本当に各自自己責任、己の力で乗り越えなければいけない。
「って…僕はこんな悠長に語ってていいのか?もう皆とはぐれて二日も経ったのに。」
僕は今、森の中を彷徨っている。
一応こんな僕でも今は、テイル隊長の三番帯に属している。
「イケっ!こんな所で何している!」
上空から聞き覚えのある声が響く。
「ルイっ!良かったぁ…二日も誰にも会えなくてさ。」
しかし、ルイの表情はどことなく暗かった。
「イケ…アキやシオナ、オリカが失踪して、俺達の世代はもう六人しかいない。」
「え?うん…知っているけど…。」
ルイが何を言いたいのか、僕はよく分からなかった。
しかし、深呼吸の後、それは明らかになった。
「…アユとカエデが死んだそうだ。」
────。
僕は一瞬、声が出なかった。
「…キリは…大丈夫なの?」
僕は、亡くなった二人より、キリの心配をしてしまっていた。
「…お前…仲間が死んだのに、自分の恋路の方が大事なのかよ…」
僕はすぐに否定しようとした。
だが、それよりも前にルイに胸ぐらを掴まれた。
「運良く三番隊になれたからってな、調子乗るなよ?グズでノロマで何も出来ないお前が、こんな所に居られるだけで奇跡と思えよッ!」
──誰のせいでこうなったと思ってるんだよ。
ハッとした時、既にルイは呆然としていた。
この瞬間、僕は心の声が口から出たのだと悟った。
「…昔からそうだ。ルイはいつも僕の邪魔ばかり。」
口が止まらなかった。
幼なじみのルイ、僕は彼とずっと一緒だった。
いつからか当たりの強くなったルイだけど、それでも僕は彼を友達と思っていた。
──母さんを見捨てるまでは。
「お前さえ居なければ、母さんは助かったんだ。お前があんな所に居たばっかりにッ!」
僕は人生で初めて胸ぐらを掴んだ。
そして、初めてルイを殴った。
気が付けば辺りは暗くなり、僕はまた一人ぼっちの夜を迎えた。
「…アキ…どこにいるんだよ。」
お久しぶりの投稿でございます!
次回もお楽しみに!




