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#14 エア


ベアの特性、ベアーズロックで呼ぶ新種のベアという事だろう。僕がこれまで見た新種のベアは三体。こらまでの一件を目の前にいるベアに伝えた。

「…なるほどね。貴方が出会ったそのベア、間違いなく私の兄姉達。そして、悪魔の木から与えられた特性を持った特別なベア。」

「悪魔の木?」

つまりはこうだ…

森の中で森の神として崇められていたベア達は、突如人間の知能によって自然を破壊された。次第に食料までも枯渇になり、ベア達は知能を使った。人間を襲撃した事で、ベアは人間より強いという事が判明した。だが、人間達は進化し、ホウジンゾクとなり対立した。

このままでは勝てないと踏んだとあるベア達は、悪魔の木と契約を交わした。その契約というのが、特性と言われる能力の覚醒だ。その能力を解放したベアが全部で九種類いるらしい。

僕が出会った新種は三体、そして目の前のベアを含めて四体。あと五体も能力を持ったベアが存在すると言うのだ。

「…擬態のベアに炎を纏うベア、そして心を読むベア。あなたの能力は?」

「…私の能力は飛行。飛行のベアとでも言ってちょうだい。ぶっちゃけた話、あなた達ホウジンゾクと何ら変わりないわよ。ちょっと色と体格が違うだけよ。」

 笑いを誘ったのだろうか、飛行のベアは微笑みながら顔をこちらに向ける。

 しかし、ベアの事情を知った以上、僕にとっての正しい選択はどこなのだろうか。

 こんな事に悩んでいる僕はいつの間にか大きく道を外してしまったのだろうか。

「…でももう後には引けないんだ。」

 考え事の末独り言を呟くと、飛行のベアは静かに立ち上がった。そして、城の外を眺めた。

「…あなたはこれからどうしたいですか?勿論、どんな結果になっても止めはしません。仮に私を殺す事になったとしても。」

「僕は飛行のベア、あなたと協力してこの戦争を終わらせる。それが今の僕の望みです。」

僕の決心した表情にベアは一瞬驚いていた。しかし、すぐにクスッと笑い、城の外を指差した。ベアの方へ歩み寄り指差した方向を見ると、湖の一部がブクブクと泡が浮いていた。

「…あれは?」

「湖の伝説が起きたのよ。貴方が錆び付いた未来の歯車を動かしたの。」

すると泡が浮いた湖の中から巨大な恐竜のような生物が姿を見せた。

「あれが湖の伝説。」

「…さあ。」

僕とベアは共に城を降り、湖へ急いだ。

「我が名はクッシー。生ける湖の伝説とは私の事だ。私を起こしたのは貴様らか。」

クッシーと名乗る湖の伝説が言葉を発した。驚いた僕とベアはゆっくりと頷いた。そして、これまでの経緯を話した。

「其方達の話は理解した。故に其方達は我に何を求む?」

「力を貸して欲しい。」

クッシーは「良いだろう」とだけ告げ、僕とベアに向けて光を放った。

光に包まれた僕達は目を閉じた。

それからの事はあまりよく覚えてない。


気が付くと僕とベアは見知らぬ土地へと飛ばされていた。

周囲を見渡すも湖や城は無かった。湖を囲う森まで消え、辺りは乾き果てた荒野のような場所であった。

慌てて飛行のベアを起こそうとすると、そこには見知らぬ女性が横たわっていた。困惑する中、一先ず声を掛けてみる事にした。

「…あの、大丈夫ですか?」

僕の問い掛けに女性は眉間に皺を寄せながら、ゆっくりと目を開いた。ハッとして周囲を見渡す女性。見た所ベアではない、どちらかといえばホウジンゾクに似ている。

正面から女性の顔を見ると、パッチリとした大きな目に真っ白な肌。タレ眉で高い鼻、そして薄い唇。体型は痩せ型で身長は女性の平均値くらいだろうか。一つ言えることは、控えめに言っても絶世の美女であるという事だ。

「…湖…城…クッシーは!?」

あの現場に潜んでいたのだろうか。女性は僕と全く同じ反応をしていた。

「貴方もあの場所にいたんですか?全然気が付かなった。」

「…何を言っているの?」

女性との噛み合わない話に僕は違和感を感じた。それに女性は僕と会ったのは初めてでは無いという口調であった。

「いや、あの場所には僕と飛行のベアしか…。」

「…私がその飛行のベアですよ?」

僕は目を見開いた。どこを見てもベアの姿はない。そして僕を知るこの女性は、一緒にこの場で倒れていた。

僕は信じ難い事が起こっているとようやく理解した。

「…なんで俺達と似た姿になっている!お前の身に何があったんだ!」

僕は女性の肩を強く掴んで問い詰めた。

初めはポカンっとしていたが、次第に手や腕、足や体型を見てハッと驚いていた。

「…何…何が起こったの?」

僕が聞きたい事を女性は聞き返してきた。つまり、僕と同じで何が起きたか分からないという事だ。

しかし、原因は一つしか考えられなかった。

「クッシーに聞かないと分からないが…そもそもここはどこだ?」

「分からないわよ!」

女性は動揺を隠せず、困惑した状態が続いた。

「…一先ず黙っていても仕方がない。何か手掛かりが無いか探そう。話はそれからだ。」

僕が手を差し伸べると、女性はゆっくりと立ち上がった。

「…えーと、もうベアじゃないんだし、なんて呼べば良い?」

女性は暫く考えて答えた。

「…飛行のベア…飛行…飛ぶ…フライなんてどう?」

「…無いな。」

それからなんやかんやあって、試行錯誤を重ねた結果、彼女の名前は【エア】となった。


次回もお楽しみに!

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