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#0 始まりの鐘は突然に

皆様いつもお仕事お疲れ様です!ゆるです!

新作です!ぜひ楽しんで読んでください!



カーンカーンカーンッ!

時刻の数だけ鳴る時計台の鐘。

しかし、鐘は永遠と鳴り続けていた。

何かが起こると警告するように…。


…そして、人類は絶望した。

…この地に平和が訪れる事はないのだと。


一九四五年 十二月九日 サッポロ市


街の道路や建物は、辺り一帯を白く染めていた。

すすきのの交差点は相変わらずの渋滞。クラクションが鳴り響く中、ウイスキーの看板が雪を極彩色に照らしている。

この雪国に住み続けて三十年、今更雪を見ても何とも思いやしない。

むしろ、鬱陶しいとまで思ってしまうのは仕方の無い事だ。

ここサッポロ市は、北海道の中でも唯一の都会と言っても過言では無い。

だが、私はサッポロ市の中でも田舎の方で暮らしている。

大学へと進学が決まった八年前。

その際、地元から越して来たのだが、費用を抑える為に住み始めたのがこの南区に建つアパート。未だに同じアパートに住み続ける理由、それは金銭問題だ。つまり、甲斐性なしという事である。

日頃のストレスで給料は煙草やアルコールへと変わる。そして、そのお金は浮腫となって身体へ返ってくる。

こんな虚しくも抜け出せない生活が唯一の楽しみになってしまっている。

だが、何の変哲もない暮らしに嫌気がさす時もある。

学生時代に比べたらむしろ増えたような気もする。

何か面白い事が起きないか、怪物が街に現れたりしないか、死んだら新しい人生を送りたいなど…最近の脳内はそんな事ばかりで敷き詰められている。

男っ気の無い私生活に両親も呆れ返っている。よって、実家に帰ることも今ではストレスなのだ。

このつまらない人生と現実に毎日向き合っている自分を褒め称え、今日も独りで乾杯をかました。


だが、いつかはこんな平和な暮らしさえ、突然消え去ってしまうものだ。

例えば、重い病気を患ってしまった。

はたまた、何かが原因で死を迎えてしまった。

理由は様々だが、人間は『いつかあの日常を取り戻したい!』、そう強く思う日がやって来るのだ。

そう、この日を境に人類は絶望を味わう事になる。


二十一時過ぎ、外から多くの人の悲鳴が聴こえた。

あまりの悲鳴の連鎖に耐え切れず窓を開けると、見知らぬ人達が何かから逃げている様子だった。

そして、全員が同じ方向へと走っていた。

逃げる人達はチラチラと後方を見ながら走り続ける。そして、同じ方向へ振り向いた私は驚愕した。

暗くて見えにくいが道路の上に複数体何かがいるという事だけは把握出来た。

ここはアパートの二階に位置しているが、この距離で見ていてもかなりの大きさだと分かった。それは体長二メートル、三メートル級の生物。仁王立ち状態で歩みを進めている生物もいれば、四足歩行で進んでいる生物もいる。


直ぐに部屋の明かりを消し、物陰から様子を伺う事にした。

すると、近くの公園に隠れていた男性が悲鳴をあげながら逃げ出した。

それを見た複数の生物は、全速力で男性を追い掛けた。

その速度は、五十キロ程だろうか。原付よりも早かった。

そして、一匹の生物に追い付かれた男性の悲鳴は一時的に聴こえなくなった。次第に二匹…三匹…とその生物は男性を囲んでいた。少しの間の静けさは、徐々に男性の断末魔へと変わっていった。


「やだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!やめてッ!やだッ!やだッ!いだッア゛ア゛ア゛ア゛ッいだいッ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!○×△※∀✰△?。、,*!&#@#◇▽◁~☆…」


グチャッグチャッとも聴こえ、バリッバリッとも聴こえるその音は男性が捕食されている音であった。

人肉を噛みちぎり、骨をも砕くその音は、暫く脳に響き渡っていた。


男性の悶え苦しむ声が聴こえなくなるまで、あまり時間は掛からなかった。

私は過呼吸気味な息を殺し、震える両手で口を抑え続けた。

先程まで飲んでいたアルコールの影響もあり、普段より速い心拍を感じ取った。

窓の隙間から外を見続けていると、一匹の生物が突然バッ!とこちらに振り返った。

それに驚いた私は、身を隠しながらゆっくりと窓を閉めた。

物音を立ててしまった事を後悔しながら、心拍音が恐怖感を際立てていた。

あの生物が何なのかは分からないが、一先ずその場をやり過ごす事で頭がいっぱいだった。

五分程経ち、恐怖心に逆らいながら再びゆっくりと窓を開けた。

道路には食べ掛けの死体が転がっており、謎の生物の姿は無かった。

安心しきった次の瞬間だった。二メートル級の生物が、死角から全速力で窓に突っ込んで来たのだ。

窓硝子は粉々に飛び散り、勢いよく飛ばされた私の身体に小さな硝子の破片が突き刺さる。

痛がっているのも束の間、目の前に全身真っ黒の生物が人間のようにゆっくりと立ちあがった。

その生物は私を少し見ては通り過ぎて行き、玄関の鍵を開けた。

再び戻って来たのを見て、私はベッドへと逃げ込んだ。

そして、一匹…二匹…次から次へと黒い生物は入ってきた。

既に私は恐怖で声が出なくなっていた。

狭い部屋の中が大きな生物達で埋め尽くされていた。

すると、二足歩行の黒い生物は部屋の明かりを付けたのだ。

明かりに照らされた生物達の身体は、黒色もいれば茶色も居た。そして、この生物達が何なのかを把握した。


そう、【熊】だったのだ。

正確に言えば【熊】と思われる謎の生物だ。


二足歩行で歩く熊は、指を立てて他の熊へと合図した。

次の瞬間、他の熊も二足歩行で歩き出し、四匹の熊が私の手足を押さえ付けた。残った熊は私の周りを囲み、逃げられないようにこちらを見張っているようだった。


『…フガッ…フゴッ…ンナ…ヒ…ナ。』

熊同士で会話をするように複数の熊が恐怖で震える私の身体を嗅ぎ続けていた。

そして、再び二足歩行の熊が合図を出した。

その合図で全ての熊が私の腹部に噛み付き、皮膚や内臓を喰い荒らした。

「いだぁぉぁぁぉいやいやぅッ!!!らやらなおなおなか、やめてやてててあぉぁぉぁぁいッッッッッ!やめでぇぇぇぇえてねねねたけえてたずけててねてッッッッ!!!!!」


四肢を強い力で抑えられている為、抵抗するも微動だに動かない。押さえ付けている熊も、手足の指を食べ始めた。私は激痛に耐え切れず、無心で悲鳴をあげ続けた。

誰かが助けに来る期待も虚しく、それが叶う事はなかった。

次第に意識は遠のいていく。再度自分の身体を見た時には、既に上半身と下半身は食いちぎられていた。


何の目標も無く、ダラダラと生き続けたバチが当たったのか。

走馬灯を感じ取る前に、頭部は熊の胃の中へと消えていった。


そして赤く染まった熊達は、血の足跡のみ残して姿を消した。



一九四五年 十二月九日から十四日にかけて、突如現れた【熊】と思われる特異生物によって七名が殺害された。次いで、三名も重症を負う事態となり、現在複数の【熊】と思われる特異生物は姿を消したままだ。

出現の合図は鐘の音。

道内の住民も鐘の音に怯えながら生活する日々が続いた。

年明けを迎えるまで、何度鐘が鳴ったのだろうか。気付いた時には、道内人口の半分が【熊】と思われる特異生物に殺害されていた。


後に【熊】と思われる特異生物は【ベア】と名付けられた。

【ベア】を捜索する連合隊が結成されるも、行方不明者が後を絶たなかった。

一部の骨が落ちていても、それはもう誰の骨かも分からない。

肉体さえ残らない【ベア】の残虐な行為。こういうものだと慣れてしまうのが怖くなってしまう。


冬眠の時期を超えて桜が散る頃、人口は百五十万人を切っていた。

後に【北海道】という地名は消え、残された村は数カ所のみとなっていた。

都会のビルは廃墟と化し、後に草木の成長により埋め尽くされた。

それでも冬には草木は枯れてしまう為、再び廃墟と化した建物達が顔を出す。


そんな日々の中、新たな【ベア】を討伐する部隊が【モルイ村】で結成された。

彼等の尽力により、【ベア】の分析や解剖は順調に進められていた。

討伐しては捕獲を繰り返し、次々と分かる【ベア】の生態より、人類達は武器や防具の開発に全力を注いだ。


そして、【ベア】襲撃事件より二年が経った。


二年の月日を経て、人類達は反撃の狼煙を上げた。

【ベア】を討伐する部隊は名を馳せ、名誉ある団体【ベアーズロック】と名付けられた。


そして、【ベアーズロック】に守られながら、此処モルイ村にも新たな命が誕生していった。


…そして、五十年後。

モルイ村に一人の男の子が産まれる。名はアキと名付けられ、両親に大切に育てられた。

しかし、彼に襲い掛かる悲劇は、後に【ベアーズロック】への入隊を志すきっかけとなる。


…そのお話はまた、五十年後の未来でする事としましょう。






次回もお楽しみに!!

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