七夕
焦げた肉、流出する血、塵のように積もった屍から発せられる腐敗臭が入れ混じりながら、枯れた風にのって荒野を覆い尽くす。
「またいつか………」
暗雲の中に陽光が射し込む。
程よく心地の良い温かな光が、青年の最期を見届けた。
2007年7月7日
年に一度、街が総出でこの日の為に準備をし、盛大に祭る日。
老若男女問わず、左を見ても右を見ても賑やかで、花火の下で皆飲んで食べてをしている。
「はぁ……はぁ……!」
それとは裏腹に颯爽と森を駆け走る少女がいた。
少女から逃げるように走るのは獣……とはまた違った異形のもの。
「待てゴラァ!!!」
「ひぃぃ!!?」
雄叫びのように後ろから制止を促す声が襲い掛かり、それに一瞬気を取られて足が木の根に引っ掛かる。
異形はすぐ様体勢を立ち直して走ろうとしたが、追いかける少女はその隙を逃さず、数m高く跳んで腰に携えた鞘から刀を抜いて異形の脳天を刺す。
バタッ
刺した勢いでそのまま崩れるように地に仰向けになる。
少女は至る所が泥や土で汚れていて、木の枝に引っ掛かった切り傷が無数にあった。
「つ、かれたー」
今まで蓄積してきた疲労がどっと少女の身体に満遍なく伸し掛る。
目蓋が落ちていくが、それに抵抗する力もなく、そのまま視界を閉じる。
「う、ーん」
眩しい。
目を閉じた状態でも分かるくらいに眩しく、本能的に体が眠りから覚醒する。
体を起こし、徐々に視界を広げる。
すると一気に光が入り込んだが、次第に慣れていき疲れ果てて寝た森の光景が広がる……
「は?」
筈だった。
「え、あ…………は?」
困惑する。考えがまとまらない、脳が視界から得た情報量に処理しきれていない。
虹色に輝く雲、見たことも無い形の山々、異形の鳥、そして真っ先に目に映る筈の木々は無く、生い茂った草と絶壁の崖。
無限に入り込む情報を一旦中止する為に、彼女は再度目を閉じて、大きく息を吸い込む。
「どこだココぉぉおおお!!!!?」