90/242
なんで謝るの?
「――それじゃまたね、彩ちゃん!」
「無理せずゆっくり治せよ」
「うん、今日はほんとにありがと皆」
それから、一時間ほど経て。
口々に暖かな言葉をくれる皆を、感謝を込め笑顔で見送る。……ほんと、みんな優しいなぁ。こんな私のために、わざわざこんなにも――
――トントントン。
「…………ん」
ふと、微かに鼓膜を揺らす音。ゆっくりと身体を起こすと、オレンジ色の光が差し込んで……そっか、寝てたんだ、私。
まあ、それはともあれ……今、音したよね? でも、誰だろう? そんな疑問を浮かべつつ、ゆっくりと歩いていき扉を開く。……よもや、あの両親がわざわざ来るとは思わな――
「……あっ、ごめんね久谷さん。無理させちゃって」
「…………あ」
すると、そこにいたのは申し訳なさそうに話す美形の男性。そんな彼の姿に、どうしてかホッと安らぐ自分がいて……ふふっ、なんで謝るの?




