表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂った針は戻らない  作者: 暦海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/242

欠席

「……本当に、ほんの少しでも良い。なにか、少しでも事情を知っている人がいたら教……いや、知っててもここでは言いづらいよね、ごめん」



 翌日、朝のホームルームにて。

 教壇から、控えめに問い掛けるも返答はない。……いや、問い掛けてもいないか。結局、最後まで言い切れずただ謝っただけだし。


 だけど、この沈黙は恐らく僕の言葉が伝わっていないからじゃない。むしろ、今の僕の話に関し何かしら共通の認識がある――それが、皆の表情や反応から改めて見て取れる。今、教室ここ蒔野まきのさんがいない理由に関し、何らかの共通の認識が。



「……それでは、ホームルームを終わ――」

「ちょっと待って!!」


 その後も沈黙が続き、ホームルームも終わり間近のこと。

 些か躊躇いつつ告げる僕の言葉を遮る形で、不意に立ち上がり声を上げる女子生徒。少し呆然とする僕に、その生徒――久谷くたにさんは再び口を開いて、


「……その、由良ゆら先生。えっと、蒔野さんのことなんだけど……たぶん、昨日送られてきたメールが関係あると思う」

「……メール?」

「あっ、それたぶん私のとこに来たのと同じやつ! なんか、急に美加みかから送られてきて……」

「……っ!! ちょっと待ってよ亜紀あき! 私だって、なんか急に香菜かなから変なメールが来て怖くて――」

「――ちょっと、私のせいみたいに言わないでよ美加! 私だって急にあんなメールが――」

「――落ち着いて皆! 僕は誰も責める気なんてないから!」


 すると、久谷さんの言葉を皮切りに次々と発言をする生徒達。そして、そんな彼女達をどうにか宥めつつ情報を整理する。恐らく……いや、間違いなくチェーンメールの類だろう。何処かの誰かが、何らかの意図で蒔野さんに関する何かしらの情報を流したんだ。事実かどうかも定かでない――ともかく、恐らくは彼女の名誉を酷く損ねるであろう何かしらの悪質な情報を。



「……それで、先生。そのメールの内容についてなんだけど……ごめん、流石にここでは言えないかな。この様子だと、たぶん皆も知ってると思うんだけど……それでも、内容が内容なだけに、多くの人の前で話すようなことじゃないと思うから……だから、また後で話すね?」

「……うん、ありがとう久谷さん」


 その後、逡巡したようすでそう話す久谷さん。そんな彼女の気遣いに、こういう状況ながらもじんわり胸が暖かくなる。


 ところで、本来ならもう一限目が始まっている時間なのだけど……今日、このクラスの一限目は古文――僕の担当する教科だったのは幸いだったかも。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ