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それ相応の理由があって。
ともあれ、先ほど彼女の言ったように二人きりの状況ではあって。そして、それには一応、それ相応の理由があって。
『――あの、由良先生。もし宜しければ、先生に無理のない範囲で補習を行ってくださいませんか? もちろん手前勝手な申し出であることは承知していますし、先生もお忙しいはずなので無理にとは言えませんが』
数日前、屋上にて告げられた蒔野さんの言葉。補習というのはあの休学期間の、という意味で間違いないだろう。
そして、そういうことなら断る理由もない。彼女が休学していたのは、やむを得ない事情があってのこと――ならば、その分を取り戻すための補習を行ったとて特別扱いにはならないだろう……たぶん。




