お互いさま?
「……でも、ちょっと焼けちゃうなぁ。大切な教え子とはいえ、恭ちゃんが他の女の子に夢中なんて。このままじゃ、その子が恭ちゃんのこと好きになっちゃうかも」
「いやいや、夢中って……それに、僕のことを好きになるなんて有り得ないですよ」
すると、少し不満げな表情でそんなことを口にする薺先輩。まあ、流石に本気では言ってないだろうけど。
「……恭ちゃん、ほんと何にも分かってないね」
「……へっ?」
「知らないみたいだから、教えてあげるけど――モテるんだよ、恭ちゃん。美形だし優しいし生徒想いだし、むしろモテない方がおかしいくらい」
「……へっ、いえ僕はそんな――」
「――去年、何度も相談されたんだよ? 恭ちゃんに振り向いてもらうには、どうしたら良いか――そういう類の相談を、何人もの女の子に。そんな時、モヤモヤやら申し訳なさやらでどんな表情すれば良いか……そんな私の葛藤が分かる? 恭ちゃん」
「……あ、えっと……すみません」
そう、珍しく少し強めの語気で捲し立てる薺先輩。まあ、それでも本気で怒っているわけじゃないのは分かるのだけど。
……あと、多少なりともお気持ちは分かりますよ? 僕だって、先輩に関しその手の相談を何度も受けていますから。ご自覚ないかもしれませんが、すっごく人気なんですよ? 薺先輩。
さて、随分と今更であり、そしてもうお察しかもしれないけれど――薺先輩と僕は、実は恋人だったりするわけで……うん、未だに僕自身、信じられなかったりするんだけども。