久谷彩香
……ところで、それはそれとして――
「……あの、久谷さん。その……大丈夫かい?」
その日の放課後のこと。
廊下にて、一人で歩を進める久谷さんへ控えめに問い掛ける。すると、少し間があった後――
「……あははっ、なにそれ先生。急にそんなこと聞かれて、なんて答えたら良いの? 私」
「そ、そうだよね……うん、ごめん」
そう、パッと振り返り笑顔で答える久谷さん。……まあ、それはそうだよね。……だけど、この笑顔から判断しても、やはり以前の彼女とは――
「……ううん、分かってる。私のこと、気に掛けてくれてるんだよね? でも、大丈夫だよ。ありがと先生」
「……あ、いや、そんな……」
「じゃあ先生、また明日!」
「あ、うん、また明日……」
すると、感謝の意を告げた後、別れの挨拶と共にさっと手を振り去って行く久谷さん。そして、たどたどしく答えつつ彼女の背中を見送る僕。
……さて、どうするべきか。大丈夫と言っていたものの、このまま放っておくわけにもいかない。だけど、現時点で僕に何が出来……うん、教師としては情けないんだろうけど、ここは頼ってみようかな。




