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いかがでしたか?
「……とりあえず、今日は帰ろうか。もうすっかり暗くなっちゃったし、送ってくよ蒔野さん」
「ふふっ、ありがとうございます由良先生」
ともあれ、そう告げると何処か楽しそうに謝意を述べる蒔野さん。……うん、これまた特別扱いに該当する気がしないでもないけど……でも、今回は仕方ないよね? 時間も時間だし。
「それじゃ、これ以上遅くならない内に…………ん?」
「どうかなさいましたか? 由良先生」
「……あ、いや、その……」
ふと、言葉が止まる。……いや、ほんと今更なんだけど……そう言えば、目を覚ました後のあの随分と柔らかな感触……そして、今更ながらこの場では随分と違和感のある、蒔野さんのあの姿勢――
じとり、冷や汗が流れる。すると、そんな僕の様子に何か――いや、恐らくはさっきの時点で察していたであろう蒔野さんが、何とも楽しそうな笑顔で口を開いた。
「――いかがでしたか? 私の膝の心地は」
「いやほんとごめんなさい!!」




