衝撃
「……ふぅ」
それから、数日経た休日の朝。
随所随所に呼吸を整えつつ、ゆっくりゆったりと川沿いを走っていく。ちなみに、すぐ左に見えるは鴨川――京都市の南北を流れ、長さ27kmにもなる淀川水系の一級河川で。
ところで、休日の朝はこれが――鴨川沿いをジョギングすることが習慣となっている。市街地の賑やかな雰囲気も嫌いじゃないけど……比較的人の少ないところで自然を身近に感じる時間も、やっぱり心身の安定のためにも必要だと思うから。
「……これで、良いのかな」
それからほどなく、走りを止め歩きつつそんな呟きを零す。何の話かと言うと、蒔野さんに対するこれまでの僕のアプローチについてで。
僕の思った通りにすれば良い――以前アドバイスを求めた際、薺先輩はそのように言ってくれた。……でも、本当にこれで良いのかな? 一応、一定の成果が出てる気もしなくはないけど……何かが、足りない気がする。きっと、それはもっと決定的な、根本的な何かで――
「――うわっ」
「……あっ、ごめん! 大丈夫かい!?」
そんな黙考の最中、ふと胸の当たりに衝撃が走る。見ると、そこには鮮やかな金色の髪が。どうやら、この子とぶつかってしまったらしい。まあ、流石に衝突は確認せずとも感覚で分かったのだけど……それはともかく、大丈夫かな? 衝撃の程度から判断するに、きっとこの子は走ってきたのだろう。だとしたら、その分この子への衝撃も強く――
「――別に、大丈夫」
「……へっ?」
すると、ポツリとそう言ってそのまま駆けていく男の子。いや、顔が見えたのは一瞬だったし後ろ姿からも断言はしかねるけど、恐らくは……ただ、いずれにせよ大丈夫そうなら良かった。
ところで、それはそうと……随分と、綺麗な子だったな。一瞬だったけど、それだけははっきりと分かった。
彼も、よく鴨川に来るのかな? ……いや、どうだろう。僕は休日含めそれなりの頻度でくるので、彼もよく来てるのなら、この長い川沿いと言えど一度くらいは見かけてそうなもの――
……うん、よそう。考えても分かることじゃないし、もしまた出会すことが改めて謝ろう。




