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狂った針は戻らない  作者: 暦海


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浅からぬ翳

 ――時は、数日前に遡る。



『――あの、由良ゆら先生』 

『ん、どうかしたのかな蒔野まきのさん』

『……あ、いえ……何でもないです』



 放課後、教室を後にし廊下を進む由良先生を呼び止めるも、自身で言葉をとどめる。きっと、何かを察したのだろう。どうか、何も聞かないでほしい――そんな悲しくなる意思が、私の良く知る穏やかな微笑から明瞭に見て取れたから。


 ともあれ――そんな彼の様子から、確信に至った。やはり、何かあったのだと。彼の心に、浅からぬかげを落とすような何かが。


 

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