お弁当
「――ここ、お邪魔しても良いかな? 蒔野さん」
「……あの、由良先生。もう何度も申していますが、別に私に許可を取る必要はないのですよ?」
「ははっ、まあ一応ね」
それから、二週間ほど経て。
昼休み、例のごとく屋上にてそんなやり取りを交わす僕ら。もはや恒例のやり取りで、それがなんだか心地好くて。
「――それにしても、よほど私のことがお好きなのですね、先生?」
「……うーん、まあ否定はしないかな」
「……いや、そう返されると困るのですが」
――なんて、最近はお互いそんな冗談まで交わせるようになってきて。……まあ、別に冗談でもないんだけどね。実際、好きかどうかと問われれば間違いなく好きだし。
「……ところで、以前からお尋ねしようかなとは思っていたのですが……もしかして、いつもご自分で作っていらっしゃるのですか? お弁当」
「えっ? うん、そうだよ。蒔野さんは?」
「……私も、一応は自分で作っています。ですが、凄いですね由良先生」
「……いや、それを言うなら蒔野さんもだよね」
「私は基本的に暇ですから。ですが、先生はお忙しいはずなのに……」
「……うーん、そうでもないけどなぁ。実際、蒔野さんの方がよっぽど凄いと思うけど」
ともあれ、食事開始から数分後。
そう、感心した表情で言ってくれる蒔野さんに反論する僕。実際、蒔野さんの方がよっぽど凄いと思う。僕が学生の時は、自分で作ってなんていなかったし。
「……ところで、先生。もし宜しければ、今度……いえ、何でもないです」
「……? そうかい?」
すると、少し目を逸らしつつ何かを話そうとするも、自身で留める蒔野さん。いったい、どうしたのだろ……うん、まあ良いか。言いたくなったら、その時にまた言ってくれるだろうし。




