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藤宮薺
「――どうだった、恭ちゃん。就任初日、やっぱり緊張した?」
「……ええ、薺先輩。それこそ、あまりにぎこちなくて生徒達に笑われてしまって」
「ふふっ、なんだか恭ちゃんらしいね」
その日の、夕さり頃。
業務を終え、茜に染まる帰り道を歩いていく。隣で楽しそうに微笑むのは、背中まで伸びる鮮やかな茶髪を纏う優美な女性。彼女は藤宮薺――担当科目は数学で、今年は二年五組を受け持つ僕の一つ歳上の先輩だ。いつも優しく、頗る生徒想いの薺先輩は多くの生徒から慕われていて、僕もそんな彼女を心から尊敬している。まだまだ未熟な身だけど、いつかは――
「――ところでさ、恭ちゃん。私に、なにか言うことない?」
「…………へっ?」