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……いや、どうせって。
ともあれ、そろそろ現実に――目の前の光景に向き合わなければ。卒然……それも、随分と久方ぶりに姿を現した私に対し――
「――おはよう、蒔野さん! ううん、気にしないで。どうせ僕の授業だし」
「……いや、どうせって」
そう、真っ先に声を掛けてくれたのは――やはりと言うか、教科書を片手に壇上から微笑みかける担任教師たる由良先生で。……いや、どうせって。
ともあれ、そんな彼の自虐に――決して暗い雰囲気にならない和やかな微笑での自虐に、室内のところどころから笑い声が起こる。……ほんと、流石だなあ先生。
あと、ついでに白状すると……再登校の日を今日に選んだのは、一限目が古文――即ち、由良先生の授業だと分かっていたからで。うん、意を決してなんて言ったけど……まあ、何とも情けない打算があったわけで。
…………ただ、それはそれとして――




