うん、同じではないよね。
「……ですが、由良先生にそのような過去があったとしても……私と同じだなんて、そんなはずはありません」
「……うん、そうだね。同じでは、ないかもね」
すると、か細い声でそう口にする蒔野さん。うん、同じではないよね。僕と違って、蒔野さんには罪がないんだから。話を聞いて、彼女自身が罪の意識に苛まれる理由は理解できるけど……それでも、僕は蒔野さんに一切の罪もないと思っている。もちろん悲しい出来事ではあるけれど、藤本さんのことはやはり不幸な事故――僕のせいで自ら命を絶った彼の場合とは、やはり決定的に違うわけで。だけど――
「……だけど、蒔野さん。僕の言いたいことは、理解してくれるよね?」
「……それは」
そう、軽く微笑み尋ねる。――そう、今重要なのは実際に同じかどうかじゃない。重要なのは……彼女と同じような罪の意識を、僕も背負っていると思ってもらうこと。贖罪を理由に彼女が自ら命を絶つのであれば、生徒を導く立場である教師も同じことをしなければ示しがつかない――そんな理屈を、彼女の心中で真実味を持たせることが重要なわけで。




