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蒔野有栖

 そう、簡潔に挨拶を述べるやいなや、すっと着席する女子生徒。肩ほどまで掛かる黒髪に透き通る瞳、そして雪のように白い肌――控えめに言って、息を呑むほどに清麗な少女だ。だけど――



(……ねえ、ちょっと感じ悪くない? あの子)

(だよね、私も思った。緊張してるにしても、ちょっと冷めすぎ)


 教壇近くの席で、声を潜め話す生徒達。もちろん、彼女――蒔野まきのさんが悪いわけじゃない。だけど……実際、彼女から受ける印象が、お世辞にも暖かな印象ものとは言えないのもまた事実で。


 と言うのも――明け透けに言ってしまえば、感情が見えない。それこそ、一切の感情が。それが、今教室(しつ)内に広がっている、何処か彼女を敬遠するような雰囲気の要因だろう。



 その後ほどなく、クラス皆の自己紹介が終了。本日は始業式のため、当然ながら授業はない。なので、今日はこれにて解散となるのだけど――やはりと言うか、久谷くたにさんの周囲には既に多くの生徒が集まっていて。早くもクラスの中心となっている彼女を見ると、僕なんかよりよっぽどクラスを纏めるに相応しいと改めて思う。そして――


 ちらと、教室後方へ視線を向ける。そこには、誰に一言も告げることなく、静かに教室を後にする蒔野さんの姿が。僕は一年二組の担任であり、当然のこと当クラスの生徒は皆、平等に気に掛けるべき立場にある。……だけど、それでも――



 ……それでも、彼女をこのまま放っておくわけにはいかない――まるで虫の知らせのごとく、僕の直観がそう告げていて。

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