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……うん、仕方ないか。
「……それでも、やっぱり私は……」
そう、少し俯き呟く蒔野さん。全く以て効果がなかった、というわけではなさそうだけど……それでも、彼女の決意を覆すには至らなくて。……まあ、それはそうだよね。僕が望んだ程度で……生きてほしいと望んだ程度で簡単に覆る決意なら、そもそもこんなに苦しんではいないだろうし。……うん、仕方ないか。
「……ねえ、蒔野さん。もし……もしも、本当に君が命を絶ってしまったら、そのカッターナイフを借りても良いかい?」
「……へっ? えっと……」
些か……いや、随分と唐突と言えよう僕の問いにきょとんと目を丸くする蒔野さん。そんな彼女の様子に、こんな状況だっていうのに思わず微笑ましくなってしまう無神経な僕。ともあれ、彼女の疑問に答えるべく再び口を開いて――
「……うん、もしも君が死んでしまったら……僕も、そのナイフで自分の首を切ろうかなって」
「………………は?」




