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……うん、自分でも思うよ。
「……蒔野さん」
そう、ポツリと彼女の名を呼ぶ。……ほんと、どうしようもないな、僕は。今、まさに死のうとしている教え子が紡いでくれた言葉に、悲痛と同じ……いや、ひょっとするとそれ以上の喜びに心が震えているのだから。だけど……いや、だからこそ――
「……ありがとう、蒔野さん。だけど、それなら尚のこと死なせるわけにはいかない。僕だって、これからも君と会って話をしたいんだから。僕にとって、ここで君と過ごす時間が……ただ他愛もない話をしながら過ごす時間が、もうかけがえのない時間になっているんだ。だから、最期だなんて言わせない」
「…………ずるいですよ、そんな言い方」
そう伝えると、少し目を逸らし呟く蒔野さん。その雪のような頬が朱に染まっている気がするのは、夕陽のせいだろうか。
まあ、それはともあれ……うん、自分でも思うよ。僕はずるくて、どうしようもなく身勝手なんだ。




