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……それでも、分かる。
「……駄目だ、蒔野さん」
そう、声を震わせ口にする。僕自身、こういった状況は今まで経験したことがない。……それでも、分かる。――紛れもなく、彼女は本気だ。本気で、自らの首筋へとカッターナイフを――
「……そうだ、話をしよう蒔野さん。そんな危ないものは捨てて、前みたいにベンチで――」
「――来ないでください」
とにかく、どうにか彼女の手を――その白い首筋にあと数ミリというところに留まっている彼女の手を降ろさせるべく話し掛けるも、まるで効果がない。ただ、少しばかり彼女へと近づいた僕の足が止まることになっただけ。……どうすれば……いったい、どうすれば――




