きっかけ
そう、真っ直ぐに告げる。何とも脈絡のなく、何とも漠然とした感謝の言葉。そして、そんな僕に二人は――
「……もう、それは前にも聞いたよ。別に、気にしなくていいのに」
「そうだよ、由良。俺らは、少し借りを返しただけなんだから」
そう、呆れたように微笑み答える。どうやら、伝わったみたいで。
さて、何の話かと言うと、あの時――京都で一緒に住んでいたあの期間、ひっそりと二人が助けてくれていたことで。
もちろん、警戒はしていた。あの時、学校関係者――とりわけ、クラスメイトに見られてはならないと。だけど、全てを防ぐことは出来ずばったり出会してしまうこともあった。例えば、二人でスーパーに行っていた時とか。
その際、僕らが窮地に陥らないよう二人が助けてくれていたみたいで。例えば、スーパーで有栖と僕が一緒にいるところを見たという噂がクラスに広まっていた際、偶然会ったという僕の言い訳に口添えしてくれたり。偶然会ってるところを、自分はこの目で見たから間違いないと。
そして、その効果は絶大だった。入学当初から皆の人望を集めていた久谷さんと、あの一件を気に徐々に皆と打ち解き次第に人気者になっていった音咲くん。その二人の言葉は、僕なんかよりよっぽど皆に信頼されて――
……ただ、それにしても……あの時、こちらの事情なんて何も知らなかったはずなのに……うん、ほんとにありがとう、二人とも。
「……あっ、そう言えばさ、二人が仲良くなり始めたのって、何かきっかけとかあったの?」
ふと、そんなことを尋ねる僕。……いや、急すぎるよね。ただ、三人ともどこか揶揄うような笑顔で僕を見るのでちょっと居た堪れなくて。でも、流石に他にあったよね。話題。随分と野暮なことを聞いてしまっ――
「……まあ、それはあれしかないよね?」
「……ああ、それしかねえな」
すると、顔を見合わせ言葉を交わす二人。そして、僕をじっと見つめ口を開いた。
「――共通の好きがあったから、かな?」




