そうはならないのかなと。
「…………さて、どうしようか」
仄暗い部屋の中、ベッドにて思考を巡らせる。蒔野さんが僕に用意してくれた、二階のお客さん用の部屋で。
もちろん、やるべきことは決まっている。蒔野さんを護ること――改めて確認するまでもなく、これは揺るがぬ最優先事項。だけど、一方でこの状況を出来るだけ長引かせないようにするのもまた重要。この一週間、明るく振る舞ってくれてはいるけれど……その奥底に底知れぬ不安や恐怖を抱えていることは容易に察せられる。そして、それらは日を追うごとに強度を増して……このままでは、事が解決する前に彼女が――
ところで、長引かせないようにとは言ったけど……恐らく、そうはならないのかなと。尤も、まだ確定とまでは言えないけど……この一週間、彼女といて……あの悍ましき気配を感じ続けて分かったことは――
「…………え?」
刹那、思考が止まる。と言うのも――卒然、背中に柔らかな感触を覚えたから。未だ止まった思考のまま、どうにかゆっくりと口を開き――
「…………蒔野、さん……?」




