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気のせいなどではなかったと。
そう、ゆっくりと告げる。その瞳には、ありありと不安の色が揺れていて。そんな彼女の言葉に、僕は――
「……それは、いつくらいから?」
「……恐らくは、一週間前……奇しくも、父が倒れた頃とほぼ同じくして」
「……そっか」
そう尋ねると、少し俯き答える蒔野さん。もちろん、彼女の言葉を疑うつもりなど元より微塵もないけど……改めて、あれが気のせいなどではなかったと確信する。帰り道、少し後方から感じていたあの悍ましい気配が気のせいなどではなかったと。……そして、一週間前……これは単なる偶然なのか、それとも――




