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それなら良かった。
「――改めてですが、今日はありがとうございます由良先生。父も喜んでいました」
「……喜んでくれて、いたのかな?」
「ええ、これでも親子ですからそのくらいは容易に分かります」
「……そっか、それなら良かった」
もうすっかり暗くなった帰り道。
そう、柔和に微笑み話す蒔野さん。気を遣ってくれている……うん、というわけでもなさそうかな。……そっか、それなら良かった。
「わざわざ送っていただきありがとうございます、由良先生。それでは、また明日」
その後、暫くして蒔野家に到着。そして、扉の前で丁寧に感謝を告げる蒔野さん。うん、また明日――そう答え、軽く手を振り再び夜道を歩いて行く僕。
――そう、本来ならきっと。
「――ねえ、蒔野さん。僕の勘違いだったら申し訳ないけど……まだ、話したいことがあるんじゃないかな?」




