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狂った針は戻らない  作者: 暦海


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13/242

表情

 ……まあ、それはそれとして――



「……あの、久谷くたにさん。その、本当に申し訳ないんだけど――」

「ああ、蒔野まきのさんのこと?」

「……へっ? あ、うん……」


 躊躇いがちに切り出すも、僕の言いたいことなどお見通しのようでそう問い掛ける久谷さん。……うん、ほんとに凄いね。


 ともあれ、何の話かと言うと――数日前、彼女から指摘を受けた蒔野さんに対する特別扱いに関してで。


 ――あの日、確かに僕は約束をした。蒔野さんだけでなく、皆同じように気に掛ける――そう、隣にいる久谷さんと約束したんだ。なのに、僕ときたら――



「――ああ、その話はいったん忘れて?」

「…………へっ?」


 すると、思い掛けない言葉が届き顔を上げる。隣を見ると、そこにはあっけらかんとした表情の久谷さん。そして――


「確かに、私は言ったよ? 蒔野さんだけを特別扱いするのは良くないって。……でも、流石に今は状況が状況だから。むしろ、今は蒔野さんのことを最優先に考えてあげてほしいな」

「……久谷さん」


 そう、柔らかな微笑で伝えてくれる。……ほんと、優しいなぁ久谷さんは。それに、僕なんかよりよっぽど頼りになる。……そうだ、ここは――


「……どうかした? 先生」

「あ、いや……ううん、何でもない」

「そう? でも、私に手伝えることがあったら遠慮せず何でも言ってね? 私も、少しでも蒔野さんの力になりたいから」

「……ありがとう、久谷さん」


 すると、またもや僕の心中を察したようで、穏やかな微笑でそう言ってくれる久谷さん。だけど……うん、流石に駄目だよね。流石に、これ以上頼るわけには――



「…………久谷さん?」

「……ん? どしたの先生?」

「……あ、いや、何でも……」


 思わず問い掛けるも、つい先ほどと変わらぬ穏やかな微笑で尋ね返す久谷さん。そして、自分で尋ねておいて何ともたどたどしく答える僕。だけど……


 ……だけど、一瞬だけ見えた気がしたあの表情はいったい……いや、やっぱり気のせいかな。





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