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天使の誕生
こんなにも丸く、大きな瞳に吸い込まれないはずがない。
初めて我が子を抱いたとき、その壊れそうなほどのやわらかさや自分の顔を見つめる無垢な表情が、自分とはまったく関係のないものに感じられた。
白い肌の内側に、自分と同じ血が流れているなんて。信じられない。今すぐこの子の身体を掻き切って真偽を調べたいくらいに。けれど、さすがにそんな残酷なことはできない。目に入れても痛くないほどに、愛しいのだから。
ふにふにとした身体を抱きすくめ腕の中で揺らしてやると、その子はふにゃと破顔した。その顔を見ると、こちらの表情まで溶けそうになる。側で見ていた妻に、「なんて顔をしているの」と引かれるぐらいには、すでに俺の顔はオカシクなっていたらしい。
それでも、他人の目など気にならないくらい、俺はこの子に陶酔してしまっていた。家の中でなく、外に出て公衆の面前に立とうとも、気味が悪いくらいにデレた顔をしているだろう。
そう。俺にとって、我が子は天使だったのだ。