橘の心境
橘伊織はとある武人の隠し子だ。
母は伊織を憎んでいた。
父は愛人である母より妻を選んだから、父そっくりの伊織に八つ当たりしていたのだ。
母の実家は裕福で生活に困ることはなかったが、要らない子扱いはなかなかに辛かった。
それでも伊織はめげずに、家の書庫を漁ってさまざまな知識を自分で身につけた。
自己流とはいえ鍛錬もかかさなかった。
やがて成人すると、母の元から離れて旅芸人となった。
母はほっとした顔をしていた。
旅芸人をする傍ら、困っている人々を助けて回る橘はやがて噂になった。
その先で、父に会ったこともある。
お互い名乗りはしなかったが、顔を見ればそっくり生き写しなのでお互いに察した。
その日、酒を酌み交わすことでお互いに心の濁った部分を払拭できた。
その後もまだ旅を続ける伊織は、ある日声をかけられた。
『この国にはたくさんの困窮者がいるのは見てきただろう?…世界を変えてみないか』
それがお館様との出会いだった。
そこには藤原若葉、藤原紅葉という双子の兄妹がいた。
保護しているのかと思えば、有力な呪術師として飼っている駒だという。
さすがに子供を巻き込むのは…と思ったが、戦場での活躍や宝物を見つけてくる嗅覚の良さを考えれば何も言えない。
その分、自分が双子を子供として気にかけておこうと思った。
子供は大人から庇護され可愛がられるものだ。
小さな頃そうは扱われなかった橘だからこそ、双子を気にかけてやれると思った。
「橘殿ー橘殿ー」
「ええい、なんだガキども!」
「必殺、セミ爆弾ー!」
わざわざセミ型の式神を作って橘の着物の内側に入れ込む藤原兄妹。
「うぉおおおお!?なにするクソガキー!」
橘は式神をぺっぺっと、着物からはたき出すと双子を捕まえて頬をつまみ引っ張る。
「いひゃいよ橘殿ー」
「にゃにするの橘殿ー」
「貴様らがつまらない悪戯をするからだうつけ!」
そんなこんなで、今日も橘は藤原兄妹の保護者役をこなしている。
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
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