水風船
「橘殿ー、橘殿ー?」
「なんだうるさいな!」
「その後宝物の手掛かりは見つかったー?」
「今探してるところだ!」
「そっかそっかぁ、橘殿は呪術が使えないから大変だねぇ」
今日も今日とて藤原兄妹にいじられる橘。
さすがに可哀想である。
「貴様ら本当にいい加減にっ」
「そんなわけでぇ、橘殿のために気分転換を図ることにしましたぁ!」
「はぁ?」
「というわけで勝負開始ー!」
紅葉が橘の近くに水の入った大量の水風船を置く。
よく見れば若葉の側にも大量の水風船。
勝負、と聞いて青ざめた橘だが時すでに遅し。
「バシャっとな!」
若葉が橘目掛けて水風船を投げる。
呪術のかかったそれは、ちょっと橘にあたっただけで破裂して橘をびしょ濡れにした。
「…やったな?」
橘はこの時点でもう色々諦めた。
どうせお屋敷の一部を水で濡らしてしまったのでお館様には怒られるだろう。
だったらこの兄妹の思惑に乗ってやろう。
橘は大量の水風船を藤原兄妹に投げつけまくる。
藤原兄妹は楽しそうにキャーキャーいいながら逃げ惑い、時々あってはびしょ濡れになりながら橘のことも同じく濡らした。
「で、何か言うことは」
「申し訳ございませんでした」
「ごめんなさーい」
「反省してまーす」
藤原兄妹の物言いにお館様はキレそうになる。
が、それでは藤原兄妹の思惑通りなので適当に流す。
「ふん。掃除はきちんとしておけよ」
「はーい!」
「お任せあれー」
藤原兄妹は呪術を使い、また式神たちにも命じてほんの一瞬で片付けを終える。
「あと残り半分は橘殿の範囲ね」
「え」
「呪術使えないと大変だろうけど、頑張ってー!」
嵌められた、と思っても後の祭りである。