勇者とは
勇者、という言葉が生まれたはいつだろうか?
「知者は惑わず勇者は懼れず」
と昔からいうから、
単語自体は昔からあるのか。
まぁ、
それはそれとして、
ありふれた過労死という死亡体験から、
気付いたらなぜか、
勇者とよばれる存在(?)の中にいた。
年齢は15歳、らしい。
なぜ、勇者とか15歳とか知っているかだが、
先ほどまで夜伽をしていたらしい美女がそう呼んでいたからだ。
「さすが勇者様」
と、恥じらいながら寝台から去っていた美女の後ろ姿をみながら、
なんというか、
とても残念な気持ちになったのは言うまでもない。
私がこの肉体で気づいたのは、
事後である。
ただ、
この肥満体の肉体のどこが「さすが」なのかは理解できないが、
仰向けになった体の一部は、確かにまだ、元気だった。
おー、若者の肉体とはかくも元気なものか、
と各所の動作を確かめていると、
ふと奇妙なことに気づいた。
指先が光っている。
透明なひかりだ。
まさか、
魔法でも?
と思い、私の記憶に中にあるのは、
指先からビームがでるのくらいで、
「まさかビームとかレーザーとかでないよね」
と口した刹那、
光っていた指先から、
まるであの伝説の漫画みたいな光線が出て、
部屋の天井を消し去って、
そらに夜空に浮かんでいた雲も消し去り、
その先にある月のようなものも消し去った。
消し去ったのは目にしたが、
私の意識も薄れていった。
ああ、
また死ぬのか、
と短くて楽しい夢だったと思いつつ、
私の意識は途切れた。