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探索物語  作者: 宇多川
3/3

故郷

書き直しです。誤字脱字、変な所あったらよろしくお願いします。

ホーライ大陸に存在する中立国アレン、バンシ王国、リン帝国、アイビ連邦の4カ国は、多くの命の犠牲と10年の歳月を経て国を再興を成し遂げ、新たな世が始まった時代。




 多くの人々が冒険という夢を求め追う中、




 何かを探している者達がいた。




 人、心、思い出、情報、資源、自身の求める何か。もしくは誰かに、何かに求められ存在している。




 それを探索する者達を、人々は【探索者】と呼んだ。








――――――



 暗闇の中、頭部のない人物は私に語りかける。




 君は、存在している。




 過去、現在、君の手にあるものを失ったとしても、存在し生きている限り、前へと進まなければならない。




 今ここは、君の存在していい場所ではない。




 たとえ、地獄のような日々が続こうとも、君を、君の力を、必要とする者がいる限り。君が君である限り。




 輪廻に加わり、歩み続けろ。




 私は頭部のない人物に手を伸ばすが、頭部のない人物は霧のように消え、私は目を覚ます。




「・・・・・また、あの夢か」




――――――――――


 アイビ連邦北の辺境にある城塞都市睡蓮の入り口に着いた墨染菫すみぞめすみれは、目が覚めと同時にため息をもらす。


 祖父の知人の車で、4時間。菫は景色の変わらない森林地帯に飽き、荒い運転を我慢したのは亡くなった母の故郷がどう変化しているのか興味があったからだ。


 菫は車から降り、背筋を伸ばす。


「坊主、さっさと入り口で都市に入る手続きして行きな。こっちは、早く帰って仕事するんだよ」


「大佐、酷いじゃないですか。新しい法のせいで、少年兵じゃなくなった無職で無力で、戦うことしか脳のない元部下を邪険にしないでくださいよ」


 大佐と呼ばれた中年女性は、菫の身体を頭から足の先まで見る。


 見た目は15、6。姿形は人とさほど変わらず、低身長で紫と黒の大きな瞳。さらに額の周囲には紫、銀、金、黒のカラフルな小さな瞳がギョロギョロと油断なく周囲を見つめている。




 一本に纏められ、腰まで伸びた黒髪を揺らし、四肢はスラリとしていて、人と昆虫の皮膚が融合したようであり、表皮には黒と赤が入り混じる。


 腰には細い一本の尾が生え、首からは少年兵だった頃の認識票がぶら下がっている。


「なにが、無力だ。最前線で生き延びたもんが、か弱い振りなんかするんじゃないよ。はよ、手続きしてこい」


「わかりました、わかりましたよ。ちょっと待ってください」


 門兵から書類を受ける菫は手続きを済ませ、荷物を取りに戻る。


「酷い別れ方ですが大佐、お元気で」


「ああ、そっちも元気で。またな」


 菫は、車が見えなくなるまで見送り城塞都市睡蓮へと入る。




――――――――――


 城塞都市睡蓮。


 四方山々に囲まれ中心には大きな湖、そこから東と北の高台に人の営みを感じさせる家が立ち並び、冒険者になるために中立組合へと向かう少年少女、屋台でものを売る商人、雑談しながら巡回する兵士、都会に憧れるエルフの男女、農具を買う農民、様々な種族の者達が道を行き交う光景。


 【大災禍】によって半壊しながらも小さな村は、10年の歳月と莫大な資源、兵士、難民と現地民によって復興し城塞都市へとなった。


 復興し発展したのすごいなとのんびり考えながら、菫は都市を探索する。

 うろちょろと歩きながら都市の中心へとつき、地図が貼られた看板で現在地を確認し都市の端にある中立組合を目的地とする菫。


「とりあえず、中立組合で冒険者になるか、探索者になるか決めるか」



 都市の中心から離れていくにつれ、半壊もしくは倒壊した建物が目立つようになっていく。しかも、半壊した建物には何人もの浮浪者が住み着いているのが確認できる。


「完全に復興した、というわけでもないか。この光景を死んだ母が見たら、キレそうではある」


 そう思いながら、木造二階建ての建物にたどり着く。


「元々、役所かな? ここは」


 玄関には、旧役所の看板と【睡蓮支部中立組合兼治安維持組織本部】と書かれた看板が掲げられている。


 室内へ入ると旧役所の1階半分は依頼や報酬を渡すための受付になっており、もう半分は喫茶店となっている。


 奥の掲示板に冒険者や探索者に依頼書が貼られているのが確認でき、2階は、治安維持組織となっており多くの兵士が出入りしている。


 菫が周囲を見渡し、誰に声をかけたらいいか迷っていると右斜め前方から声がかかる。


「あの、冒険者もしくは探索者志望の方ですか?」


 菫は声のする方へ身体と視線を向ける。


 そこには、スーツを着こなし、肩まで伸びた黒髪、細く尖った耳、鼻周りのそばかす、褐色の肌が特徴の男性が立っている。


「すいません、貴方は?」


 菫の問いには、男性はゆっくりと口を開く。



「これは、失礼しました。私は、中立組合探索者睡蓮部担当の桔梗ききょうと申します」



 と、桔梗はぺこりと頭を下げる。


「私は、墨染菫です」


 と、菫も頭を下げる。


「あの、まず聞きたいですが冒険者と探索者の仕事ってどう違うのですか?

 冒険者と探索者の違いはなんですか?」


 菫の質問に、桔梗は答える。


「どちらの仕事も似たようなものですが、冒険者は、原生生物に対しての討伐、捕獲、調査、そして冒険をするのが冒険者。



 探索者は土地、物、人、原生生物問わず調査、捕獲、討伐、運搬、採取、あらゆる探索仕事をし、依頼人、自身の何かを探索するのが探索者と考えてください」


 ニコニコと笑顔の桔梗をみながら菫は、考える。


(私は冒険したいと思わないし、何かを探し、見つけるっていうのは昔から好きだから探索者のほうがいいか。それに、傭兵も新しい法で出来ないし他の仕事ができるとは限らない)


「わかりました。探索者になります」


「では、こちらへどうぞ」


 桔梗に案内され菫は、1階の奥にある探索者睡蓮支部と書かれた部屋に通される。部屋の中心にパソコンの置かれたテーブル1つ、右奥に冷蔵庫と資料の置かれた本棚、壁に飾られた市民と探索者達の集合写真のみ。殺風景な光景だ。


 桔梗は、少しこわばった表情を菫に向け口を開く。


「まず、探索者になるにあたり菫さんには、説明することがあります」


「はい、なんでしょう?」


「本来、探索者は危険領域で活動する期間が長く命を落とす確率が非常に高い職業です。実力と実績のある人しかなれませんが最近、ある事件のせいで探索者が大勢亡くなりました。睡蓮に所属していた7名も亡くなり、枠が空きました」


 菫は額に手をあて、その事件で何かしらまずい状況なのかもしれないと考える。


 色々考えている菫を気にする桔梗は、本棚から資料を取り出し菫に差し出す。




「この睡蓮の探索者不足になった原因の詳細がここに書かれております。どうぞ」




「わざわざ、資料をありがとうございます」




「いえいえ、状況を確認してもらわなければやってほしいこともお願いできませんから」




 桔梗は、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し飲み始める。




 その間に、手渡された資料に目を通す菫。




 そこには、睡蓮の探索者が人手不足の原因である事件が記載れている。






 事の発端は1週間前。睡蓮から東北に30キロ地点にある廃村。そこで、中立ギルドの依頼により首都の探索者と睡蓮の探索者合わせて30名が、資源回収及び拠点開発をしていた。




 しかし、危険領域における資源回収許可を得ていない冒険者十数人が、【侵食病】により怪物となった【変異体】に追い回されたこと。




 追い回され逃げた先が探索者達の作業していた廃村であり、冒険者達は探索者達に【変異体】を押しつけ逃走。




 それにより現場で探索者28名が亡くなり、重傷を追いながらも2人は力を振り絞り睡蓮へ帰還し事の顛末を中立組合へ報告し亡くなった。




 結果、変異体は軍により処理され、睡蓮の探索者7名中央の探索者23名は亡くなり、事件に関わった冒険者全員が逮捕され鉱山での数十年間の労働という罰に加え、睡蓮に存在し、問題を起こした冒険者が所属していた幾多の冒険者ギルドの縮小と危険領域での資源回収を数年間義務付けた。




 この事件以降、冒険者組合と探索者組合は対立を深め、中立組合は探索者が睡蓮周辺、他の都市からの依頼、危険領域での活動をいち早く再開するため、睡蓮に移住する探索者、探索者になる者のサポートを決定し発表した。


(酷い話だが、中立組合の決断も早い)


 資料を読み終え、菫は資料を桔梗へと返す。




「人手不足も理解しました。実家の荷物が片付き次第なるべく早く、依頼を受けます」






「まずは、新しい生活に慣れることからですね。それに、菫さん以外に、2人。首都から、近いうちに移住する新人探索者がいますし、依頼は軽いものからゆっくり始めましょう」




 確かにある程度新しい生活になれ、軽い仕事から経験を積むことは大事だという桔梗の言葉を、菫は素直に受け入れる。




「それでは、大事な話も終わりました。探索者用の認識票はでき次第、渡しますね。ご自宅は、どちらで? お送りしましょう」




「北東の森林地帯にありますが、出入り口までで大丈夫です。もう少し、都市をゆっくりみたいですし。今日、色々ありがとうございました」




「いえいえ、新人探索者である菫さんには、これから様々な依頼をお願いしますから説明義務を果たしたまでですよ。それでは、出入り口までお送りします」






 桔梗と共に出入り口へいき、別れの最後に桔梗は菫に声をかける。




「墨染菫さん」




「はい、なんでしょう」




 桔梗は真剣な表情で菫の目をじっと見つめ、




「よい探索人生を送れる事を、応援しております」




 桔梗の言葉に菫は意外だなと思いながらも、すぐ笑顔を向け、




「ありがとうございます」




こうして、菫は故郷で探索者としての歩みはじめた。


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