0話 10年前の私
よろしくお願いします
彼は、生まれたときから何かを探し回っていた。自分が本当に居場所を見つけられないままに、彼は家族や友人と同じように暮らしてはいたけれど、いつも何かが違うような気がした。彼は何かを探し続けていたが、いつも心の中にある穴が埋められることはなかった。
彼はやがて、彼と同じように何かを探し続けている人々がいることに気づいた。彼はそれらの人々と会い、彼らと話をするたびに、自分が本当に居場所を見つけることができたら、どんなに幸せかと思った。
ある日、彼は自分が求めるものについて、より明確になった。彼は、細やかな幸せを求めていたのだ。しかし、どこに行っても、彼は細やかな幸せを見つけることができなかった。
そして、【大災禍】が起きた日、彼は何もかも失った。友人も、母も。そして、失って初めて気付いた。
彼は母や友人と過ごしていた日常が細やかな幸せであり、探していた居場所だったことだと。自分の心の穴を埋めていたものだと。しかし、彼の心にはぽっかりと穴が空いてしまった。
そして、彼の元に母の父親であり祖父を名乗る人が現れ言いました。
「菫、強くなれ。強くなって、友人と母の分まで幸せになりなさい」
どこか切ない表情をする祖父をみた彼は、涙が溢れ、涙が枯れるまで泣いた。それから、彼は祖父と共に前へと進み始めたのだった。