表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

私は、決して許さない

「駄目。続きが思い浮かばない、駄作だわ」


 私は、私のせいで不幸になった二人、という物語を構築しようとして、失敗したことを悟る。

 正一郎と愛華、あの二人が不幸になるとしたら、どういった筋道が良いだろう。

 想像するのは至極愉快だったけれど、どうにもうまくまとまらない。


「そもそも、何でアイツら幸せになってるのよ。傷つくようにしてやったのに」


 私が、愛華の好意を正一郎に伝えたのは事実だ。

 海外へと転校する愛華の思いを、当時小学生の正一郎が、恥ずかしくて手ひどく断る様に、そう伝えてやった。


 愛華が帰ってきたときは、正一郎を再会させた。

 正一郎には、中学生になった時に、如何にひどいことをしたのかを、愛華がどれだけ傷ついたのかを吹き込んだ。


 愛華と顔を合わせたときの、正一郎の顔は本当に愉快だった。


「まさか、付き合うとは思わなかったけれど」


 付き合い始めた二人にも、周りの人間を巻き込んで、色々としたというのに。

 結局、あの二人は幸せそうにしているのだ。


 全く、面白くない。


 幼い頃からそうだった。

 誰かが傷つくように、不幸になる様に、そう振る舞った。


 勿論、誰にもばれない様に。

 それは、とても楽しいことだった。


 ただ、行動するだけじゃない、まずはそれを想像するのだ。

 こうやって雑記帳に書き記す。


 様々な方法を、相手を陥れる計画を。

 もう、何冊目になるだろうか。


 書き終えるたびに焼却しているから、正確な数は分からなかった。


 新しく考えたのは、二人を陥れる手記、そう思って体裁を整えたのだけれど、どうやら難航しそうだった。


「まぁ、それも面白いけどね」


 口にして、もう一度最初から始めなおしてみる。


 山村恵美ここに記す


「何よ、五月蠅いわね」


 最初の一文を書いたところで、スマホが音を立てる。

 画面を見れば、妹だった。


 どうやら、食事の誘いらしい。


「しょうがないわね、今日はここまでか」


 誰かを陥れる遊びを続けるためにも、家族の仲は重要だ。

 両親も、妹も、私を守る盾になりうる。


 けれど、もしも私の邪魔をするなら。


「許さないけどね、ふふっ」


 雑記帳を閉じて、呟く。


 そうして、私は部屋を後にした。



私は決して許さない――了

カクヨムを退会したのでお引越し。

楽しんでいただけたなら、幸い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 雑記帳の秘密が最後に明かされること 読んでいて感心致しました [気になる点] とても読みやすく、気になる点はございませんでした [一言] 以前感想をいただいた者です その説はありがとうござ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ