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Legendary Life~筋肉晩餐会~  作者: 花蓮華
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運命の選択

一度すべて消して書き直しました。

読んでくださりありがとうございます。

真っ暗な部屋でカタカタとキーボードを叩く音だけが部屋に鳴り響く。

「今日はどうする?」っと・・・。

この部屋の中の灯りと言えばモニターから溢れ出てくる光源だけ。

気づけば仕事から帰ってきて最初にやる事はPCの電源を立ち上げ、幼馴染(かれら)にチャットを送る事になっていた。


「わり、まだ職場だわ」

「あたしも職場。1時間くらい経ったらインする」

「今帰宅中だね」

「いつでもやれるよ」

「ディナータイム、ナウ」


どうやらまだ揃っていないらしい。


24歳の俺が俺の人生は平凡だと悟るにはまだ早いかもしれないが、多分このまま生きても毎日が同じ事の繰り返しだろう。

冒険のような刺激のある事、非日常的な事を求めてしまうとやはりゲームの世界に浸るしかないのだ。

そんな事を考えながら夕食と風呂を済ませておく。


残業で遅くならなければ平日でも皆でオンラインゲームをやり、休日もゲームをする事が多い。


21時半か。

そろそろ皆揃う頃だろう。

モニターを見てみると既に通話が繋がれていた。とりあえず入っておくか。



「やっと来たか甲賀!あー・・・暇だ・・・なんか別のゲームやるっきゃないっしょ?」

 退屈してます。そう言わんばかりの反応をしてくれた男の名は緒方順平。

 正直俺達の中で一番飽きるのが早い。でも盛り上げ役を昔から担ってくれている。



「この間始めたばっかのゲームもう飽きたのね。まぁ甲賀も飽きてるっぽいけど」

「幸喜には見透かされてたか・・・」

 俺も飽きていた事を見透かしていた男は高宮幸喜。普段抑えているオネエキャラがたまに出てしまうが俺達は気にしていない。16の時に「実はオネエなの」とカミングアウトされた時は流石にびっくりしたが幸喜は幸喜だ。



「ならまたなんか探そう。・・・これなんてどうかな?」

 そう言いながらまたアクションゲームのURLを貼ったのは吉永孝雄。

URLを貼った時に眼鏡をくいっと上げたのが想像できる。ルックスが知的に見えるという理由で14歳の頃から伊達眼鏡をかけるようになった。確かに頭が良いとは思うけど、どこか抜けているところがあると思う。目は普通に良い。



「またアクション?流石にアクション3連発は僕も飽きたよ。しかもこれ4人用だし」

 勇樹!良いことを言ってくれた。アクションを3連続でやるのはいくら好きなジャンルだと言っても流石に飽きてくる。たまには違うジャンルのゲームもやりたいと思ってくるものだ。別ジャンルへの誘導をしてくれたのは森本勇樹。大柄で穏やかな男だ。20年は一緒にいるが怒っている姿を見たことはない。



「ならたまには遊びに出かけんべ!明日オープニングのテーマパークがあってテーマがゲームになってて色んなゲームのエリアがあるらしい!」

 最早今までのやりとりは何だったのかと思うほど別の角度から攻めてきたのが宮地嶺。

横文字を多用してくる傾向があるため俺達はたまにルー宮地やルーと呼んでいる。名前が(りょう)だし、違和感は全然ないと思っている。



「明日開園ならめちゃくちゃ混むと思うけど行ってみるかね?」

と軽い気持ちでルーの意見に乗ってしまったのが、俺斎木甲賀だ。

身長は175センチ、体重は66キロ。ルックスは普通だと思う。普通ってなんだよ。いや誰に説明してるんだ俺は。



それじゃ明日はそこに行こう。という話になり珍しく解散、翌日俺が車を出しテーマパークへと向かった。



門構えは世界観を出すためかネズミのランドにありそうな大きな門を全てレンガで作っている。

入場券が七千円を超えていて、皆で高い、高すぎると言いながら購入したが心の奥底から思っている訳ではない。

入場門の前に来てしまうと空気に飲まれテンションが上がり感覚が麻痺してしまっているのだ。

足取りは軽く、後ろから吹いてくる風が俺達の移動を後押ししてくれる。

係員が見えてきた時、俺達の気持ちは最高潮だった。

今日一日ここで楽しい時間を過ごせるのは約束されているようなものだからだ。

係員に入場券を切ってもらいゲートをくぐってしまえばそこには―――



「ダブリアス王、()()()()()()()()

白い甲冑を着た男が髭を蓄え偉そうに座っているおじさんにそう声をかけた。


(王・・・?)


「そのようだな」

髭を撫で鋭い眼光でこちらを見下ろしている。頭には重そうな王冠が乗っている。あれは恐らく本物ではないだろうか?輝きが視線を奪う。

「して、人数は何人おる」

「この王宮で成功したのは凡そ400人程です」

「そうか。まずまずだな」



「おおー!これは凄い!七千円するだけあるな!」

明らかに俺達と同じ客という立場の人間が騒ぎ立てた。

周りを見ると他にも沢山の客だったであろう人間がいる。



「おい見ろよ!?これは凄すぎるだろ!まるで王宮の広間だぜ!?」

順平も周りの客のようにテンションが上がっていたが、俺は逆に冷静になってしまっていた。

くいっと孝雄が眼鏡を上げた。

「そうだね。まるで()()()()()だ。」

孝雄の言いたい事は分かる。入場前の景色と全然違うからだ。

王宮なんて見えなかったし、更に言えば完全な室内にいつ集まったのか?特殊な技術でそう見せてるとは思えない。



「とりあえず離れないでおきましょ。この人数でバラバラになったら合流できないわよ」

「幸喜の言う通り一先ず様子を見よう」



皆目的の乗り物やエリアに向かおうと勝手に動き回ろうとしていた。

だが周りには銀色の甲冑で身を固めている兵士のような人間が沢山いて俺達を囲むように配置されている。腰には剣を差し皆槍を持っている。



「冒険者諸君!!」

何十メートルも先にいる王様のような男の隣から、白い甲冑の男がとてつもなく大きな声で俺達に声をかけた。

マイクでも使ってるのか・・・?

あまりの声の大きさに騒ぎ立てていた客達は動きが止まった。

「これから大臣から説明がある!!心して聞くように!!」


「大臣・・・?すげぇめちゃくちゃ作りこまれてる!」

そうザワついているのが聞こえてくる。


明らかに胡散臭そうな小太りの男がこちらを見るなり咳ばらいをした。

「ゴホンッ。あー諸君。諸君にはこれからこの王国の為に戦ってもらう。あーそのためにひと月かけ入念な準備をし召喚の儀を行った。あーその結果、一部の世界の一部分から人間を呼び寄せる事ができた。それが冒険者諸君だ。あー・・・王国の為に死ねない者は必要ない、この場で処分させてもらう」


アトラクションの一部ではないだろう。あの男は完全にこちらを見下しているのが分かる。癇に障るというのはこういう事なのだろう。

目なのか話し方なのか、よく分からないがあれは完全にこちらを見下している。

家畜を見ているような感じだ。

キャストであんな名演をされたら返金してもらいたくなる。



見た目がやんちゃな兄ちゃんの集団が騒ぎ出した。癇に障ったんだろう。

「何調子こいてんだお前!!こっちは客だぞ!!」

階段に向かって歩き出した。周りは誰も止めようとしない。それはそうだろう関わったら何されるか分かったものじゃない。


「あー変なのがいるな。処分してくれ」


「っは!了解致しました!」


「ああ?なに調子こいて」


ザクッ! ズバッ! グサッ!


複数の音を立て兄ちゃんの5人組は10人程の兵士に囲まれ一瞬で処刑された。

何のためらいもなく人間が人間を襲ったのだ。


「うわああああああああ!!」

「きゃああああああ!!」


多くの人間がパニックに陥った。目の前で人が切り刻まれ刺されるなんて光景を見たことある人間は滅多にいないだろう。

悲鳴を上げながら走り出した。

後ろにある大きなドアを目指して皆が皆必死に走り出したんだ。



「あ!皆!!」

「っ・・・」

「甲賀あああ!」

「皆流されたら駄目よ!!」

「うわあああ」

「ビッグウェーブ!!」



流れに逆らいたいが人間の力とはこれ程なのかという程抗う事はできない。

逆らおうとすれば足が折れるか・・・転倒して圧死するか・・・。

人の流れに逆らう事は出来ず流されるがまま流され俺達はバラバラになってしまった。



「愚かな・・・やれ」

深く息を吐き、フードに身を包む集団に大臣は号令をかけた。



その瞬間フード集団が紫色に光出す。

「「駆け流れし者を捉えよ」」

「「拘束の道(バインディングロード)」」


その瞬間地面からニュルっと生えてきた蔓上の何かが俺達を拘束し動きを完全に停止させた。


「な、なんだよこれえ!?」

「嫌だ!死にたくない!!」

「誰か助けてくれ!!頼む!!誰か!!」


しかし人間の思考を止める事はできない。動かないだけで脳が・・・心が動く限り彼等の泣き叫ぶ声が止むことはない。

いや思考というよりも恐怖という本能から導き出されている行動だからだ。


(俺だって冷静なわけじゃない。あいつらは大丈夫なのか?)


泣き叫ぶ事を最初から諦めている人間だっている。大人しくしていれば助けてもらえるかもしれない。



「こっちを向かせろ」

大臣がそう指示をすると俺達は方向転換させられた。


「喚くな!!」

また白い甲冑の男が大声で俺達を黙らせる。

音圧がとてつもなく騒ぐのを辞めてしまう程その声は響く。

音がビリビリと俺達の体に当たるのが分かるのだ。



「あー諸君。なにも戦えない者達に無理矢理戦わせるわけではない。諸君には今から渡すステータスカードで職業を選んでもらう。そうすればその職業に合った戦う力を手に入れる事が出来る。それを用いて研鑽し自らを高めて来る(きたる)べき戦いで力を貸してもらいたいのだ」


どうやら大臣は俺達を戦争かなんかで使いたいらしい。

さっきまでパニックだったから気づかなかったが、冷静になって考えればこの拘束している蔓・・・魔法なのか?

もしそうならここはファンタジーと呼ばれる世界なのではないか?



「ふざけんな!!人殺しの指示なんか聞けるか!!」

一人の男が声を荒げる。

目の前で5人殺されているんだ。当然と言えば当然の反応だ。

一人の男に触発されたように瞬く間に周りに伝染していく。

正論を言っているようだが要はただ怖いだけだ。

俺だって怖い。だが普通やルール何てものはその国や時代によって違うものだ。

この世界のこの国では処刑というのは日常的に行われる。そういう世界なんだろう。

俺達のいた世界では彼は正論かもしれない、だがこの世界ではどうだろうか?



「あー。では今から騒ぎ立てる者も処刑する。五月蠅くてかなわん」


「やれるもんならやってみろ!!」

最初に騒ぎ立てた男がまた声を荒げた。

この密集状態で狙い撃ち何て事ができるわけがない。

確実に周りの人間も一緒に殺されてしまうだろう。


「おいやめろ!お前はもう黙れ!」

近くにいる中年の男が声をかけている。


「できないんだろ!?やってみろよ!」

まだ挑発を続ける。


「あー。彼の前開けてあげて」

そう言うと拘束魔法で拘束されている人間はズルズルと動かされ騒ぎ立てた男だけが前に引き釣り出された。

完全に男は孤立している。


「やめろ・・・!やめろ!!」


「いやー駄目だろ。君がやってみろと言ったんだ。私が直接手を下そう」


「嫌だ・・・死にたくない!助けてくれ!死にたくない!!」


「愚かな男よ」

「「魔を以て死者をも塵と為れ、己が(おのが)罪焼く紅蓮の柱」」

「「亡者の火柱」」


男の足元から溢れ出た紫色の火柱が天を目掛け勢いよく昇る。


「たッ・・・」

一瞬何か声が聞こえたが昇る火によって男の存在をも一緒にかき消した。


男を焼き払ったが眉一つ動かさず、流れのまま全体に声をかけた。

「では静かになったところでカード配っちゃって」

適当にそう言うと一列に並べられた俺達はカードを一人一人渡された。


何も書かれていない、ただの紙切れだ。



「あーでは今から説明します。まずカードを三回指でタッチしてください」


いち、に、さん・・・。


「そうすると職業の名前がいくつか書かれてると思う。それをタッチすると完了で、一度選んだら変更はできないのでそのつもりでいるように」



カードに書かれている職業は親切に説明が書かれていた。

左から



戦士ウォーリア


攻撃力が全ての職業の中で一番高く、防御力は全職中二番目に高い。

攻守のバランスが良く魔法が一切使えない。

推奨武器 剣 斧 ハンマー メイス 盾 双剣 ダガー



修道士モンク


体力や状態異常耐性が高く自ら鍛え上げた肉体で戦闘を行う。

簡単な自己強化の魔法や自らを回復する呪文も初級ならば使える。

スピードが全職中二番目に早く、攻撃力と防御力のバランスが良い。

爪やナックルといった武器が壊れても自らの拳で戦う事が可能。

推奨武器 爪 ナックル



騎士ナイト


全ての職業の中で一番防御力が高い。

攻撃力は修道士と同じくらいだが鎧を纏っている為速度が減少する。

戦士と同じように盾を持てば貫かれる事のない防御力を手にする。

簡易的な術式の魔法を使用する事が可能である。

推奨武器 槍 剣 盾



聖職者ヒーラー


ヒーラーと呼ばれる回復職である。全体回復やパーティー全体の能力を向上させる魔法を習得する事が可能。状態異常解除や一時的に攻撃を遮断する魔法も習得できる。初級ならば攻撃魔法も習得可能。

推奨武器 杖 メイス



盗賊シーフ


全ての職業の中で一番速い。攻撃力、防御力が低いが隠密スキルやピッキングのような特殊スキルを習得可能。相手を妨害する罠を仕掛ける事も可能。

簡易的な術式の魔法が使える。

推奨武器 ダガー 鞭 



魔法使い(マジシャン)


攻撃魔法に特化した職業。初級、中級、上級、全ての魔法が使用可能。

相手を弱体化させる魔法も習得できる。

簡易的な術式の回復魔法も習得可能。

推奨武器 オーブ スペルブック 杖



召喚術士サモナー


魔術で異界から召喚する事ができる。精霊、魔物、人間、魔族、それぞれ己のレベルに見合ったものしか召喚できない。

弱体化魔法を習得する事ができる。

推奨武器 オーブ スペルブック 杖 



※あくまでも平均であり極めればどれも最強である。



注意書きまでされていた。


周りを見てみるとすぐに選ぶ人と眉間に皺を寄せながらじっくり考える人とで分かれている。


俺はどうするべきか・・・。

まずいつものメンバーでパーティーを組むことを前提に考えよう。

こういうゲームをやる時、俺達は皆別々の職業を選ぶ事を心掛けている。



順平は恐らくモンクだろうな。あいつの性格なら殴りこみに行けるような職業にするはずだ。


幸喜は多分ヒーラーだろう。大体ヒーラーをやってくれるし皆をサポートする立場がオネエって感じだ。勝手なイメージだけど。


孝雄はマジシャンだ。眼鏡キャラってのは大体マジシャンだ。後ろで冷静に分析しながら特大魔法とか撃っちゃうのが想像できる。孝雄は絶対マジシャンだ。


勇樹はタンカーをいつも担ってくれてる。だから一番硬いっていうナイトを選ぶだろう。勇樹のナイトなら安心だ。


そして嶺、あいつはサモナーだろうな。よくカタカナ使ってくる辺りがサモナーって感じだ。普通の職にはないような攻撃ができそうだし。召喚獣と一緒に戦いながらエクセレント!とか言ってそうだし。


となると俺は・・・ウォーリアか。

盗賊だと特殊なスキルが使えるみたいだけどパーティープレイでガツガツ戦うならアタッカーになれる戦士の方が良いだろう。


(よし、戦士だ!俺は戦士!)


戦士に触れてみるとカードにウォーリアと表示された。

ランクが1と書かれている。



「そろそろ次の説明をしよう。」

大臣は殆どの人間が選ぶのを待った後、次の説明へと移った。


「ランクというのが表記されていると思うが、これはギルドに所属し中心街の酒場に貼られているクエストを受注してこなしていくと上がっていく。自分のランクに合ったクエストしか受ける事は出来ない」


「今ここでギルド申請を行い、そのギルドに所属する事を許可するものとする。立ち上げたい者は来たまえ」


ざわざわと少しざわつきだした。三十人程が前に流れていく。

足取りの重い者軽い者様々だが、この世界で生きていく為には仕方がないと割り切るしかない。

順平達は前に出てない・・・か。


「すいません、通してください」

俺が立ち上げに行くことにしたが、人が多すぎて前に出る事ができない。

「あっすいません、通してください」

全然前に進めない。これならまだ激混みの夏祭りの方が前に進む。



「あーこれで全部かね?ではこれにて終了とする。所属したい者は今来たギルドマスター達に入隊書を提出すれば肉体にギルドマークが烙印される。そうすれば所属完了だ」


「では解散。後ろの門から出て構わんぞ。そしたら直ぐに右の扉に入るように。本日は晩餐会を行う。本来ならば礼儀作法を重視するものだが、参加者は諸君だけだ。礼儀作法は必要ないだろう。その場で入隊をするなどの交流は勝手に深めてくれたまえ」



扉がゆっくりと開いていく。



また人に流されながら晩餐会の会場へと足を踏み入れる。

学校の体育館よりも大きな会場に高級そうな料理が並べられている。

もう既に飲み始めてる人もいるようだ。切り替えの早い人だな。

まずは合流が先だ。

人混みをかき分けながらよたよたと歩いていく。



結構探したつもりでいるが全然姿が見当たらない。

料理も殆ど無くなり、冒険者と呼ばれた俺達の二割くらいしかこの部屋にはいない。

皆どこへ行ったのだろうか。


「あれ甲賀じゃないか!?」

疲れ切って座っていた俺を順平が見つけてくれた。


「やだもう甲賀ちゃんこんなところにいたの?探しちゃったわよ」

駆け足で寄ってきた幸喜は少し頬が赤くなっていた。

多分酒を飲んだな・・・。


「甲賀だけ合流できなかったから皆で食べ歩きしてたよ」

そう言いながら片手でピザのようなものを持っている勇樹は口へと運ぶ。


「ギルドは作らないのか?あの時行くと思ったんだが・・・」

孝雄がいつものようにくいっと眼鏡を持ち上げる。


「あんなビッグウェーブに飲まれたら流石にギルドクリエイトできないっしょ」

適当に横文字を使ってくる嶺は相変わらずだ。


「ギルド申請したかったけど前に進めなくてさ」

気づけばこの会場には俺達しかいなかった。

皆外へ出てしまったのだろう。でもどこへ行ったというんだ。

お金もなければどこなのかも分からないのに。


何人かのメイドが会場に入ってきた。

皆掃除道具を持ってせっせと片づけている。


「あら、クリーンがスタート」


さっさと会場から出ろという事だろうか。

閉店の時間なのに居座っている迷惑な客と同じような状態になってしまっている。

そそくさと会場をでたら、そこには大臣が居た。


気づけば大臣の前に行き俺は声をかけてしまっていた。


「あの!ギルドを申請したいのですがまだ間に合いますか?」


「んん?何故あの時来なかったのかね?」

不可解な面持ちでこちらを見てくる。


「人が多すぎて前に進めなかったんです」

あの人混みじゃいけないだろと怒りたかったが、ここは我慢しなければならない。


「ではこうしよう。私が名前を決める。君達にぴったりな名前をつけてみせよう」

俺達一人一人を見て不気味な笑みを浮かべそう言い放った。

どうせろくな名前ではないだろう。

何とかの家畜とか豚箱とかそういう嫌がらせをしてくるに違いない。


「マスターは君でいいかね?」


「はい」

マスターの確認をすると羊皮紙に何かを書き込んでいっている。


「ではまず君をマスターとして所属させる。そして順番に君達を所属させていく」

慣れた手つきで一人一人追加していき、所属リストのメンバーを確認しようと大臣がギルドカードを確認する。


見た瞬間、大臣は笑い出した。

「君達!この構成でこれからやっていくというのかね!?不可能だ!!何という面白い構成だ!」


俺達には理解が出来なかったが馬鹿にされているのは間違いない。

この野郎!そう怒ろうとした瞬間、大臣は口を開いた。


「いやすまない!今までこんな構成を見たことがなかったんでな。正直家畜という言葉を入れるつもりだったが君達にその言葉は似合わない」

まだ笑いが止まらない大臣を俺達は冷めた目で見ていた。


「その顔を見る限り、まだ互いの職業を知らないんだろ?君達のギルドの名前はこれで決まりだ。ギルド規模は最低の六人にしておく。これ以上ギルドに人を入れる事はできない。入れようとしても烙印されないから所属にはならん。面白いものを見せてもらったよ頑張ってくれたまえ」


そう言いながら上機嫌に晩餐会のあった部屋へと入っていく大臣を俺達は凝視した。



「なんなんだあの大臣はよ」

少し怒り気味に言った俺の肩に手を置いて順平が言う。

「メンバーの職がどうって言ってたよな、皆何にしたんだ?俺は戦士なんだけど」


「え?俺も戦士だけど・・・?」

まじかぁと驚いた表情を順平に見せる。まぁアタッカーが二人居ても良いだろう。


「あら?あたしも戦士だけど?」

奇遇ねと言いたそうな顔で俺を見てくる。

まぁアタッカーは三人居てもまだパーティーの半分だ。全然問題はない。


「はっはっは!俺もウォーリアだぜ!」

とてつもなく嬉しそうに嶺が声を上げる。

嘘だろ・・・?パーティーの半分以上がアタッカーになっちまった・・・。頼む勇樹!


願いを込めて勇樹を見つめるとそれに気づいた勇樹が両手に持っているピザのような料理を口へと運ぶ。

「僕は戦士だね」

これで五人がアタッカーになってしまった。


って事は・・・無言で孝雄に視線を移す。


くいっと眼鏡を上げると黙っていた孝雄が口を開いた。

「勿論、戦士だ」



こんの脳筋さんがああああああ!!!

ここから俺達の無謀とも言える冒険が始まる。




―――ギルドカードにはこう書かれていた。筋肉晩餐会―――




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