人の心を読めても尚、平常心でいられるのか!!!
突然ですが、皆さんは他人の心が読めたらどう思いますか?最初は嬉しいと思う人も少なくないでしょう。ですが、それを何年も続いたらどうでしょう。平常心を保てるでしょうか?
この物語は、生まれつき心を読むことができる少年の物語である。
ある日の学校のこと。一人の女生徒が俺に話しかけてきた。
「ねえ海斗君、何しているの?」
彼女の名前は貢木優奈。俺のクラスメイトだ。
「特に何も。勉強をしているだけだよ」
俺は視線を机に向けながら言った。
嘘だけどな、俺は人に視線を向けると勝手に心を読めちまうんだ。だからなるべく見ないようにしてるんだよ。
「人と会話をするときは人の目を見てするの!」
優奈は俺の頬に両手をあてながら言った。
バカヤロウ、そんなことすると心の声が。
((まったく海斗ってば、せっかく勇気を出して話しかけているのに目を見なさいよ。))
見えちまったよ。
俺は優奈の手をすぐほどいて再び机に視線をやる。
「また目を逸らした。まあいいわ、そのままでいいから聞いてよね。今日の放課後、一緒に買い物に行ってほしいの」
「なんだ、デートの誘いか?いいぜ」
まったく、普通にデートって言えよ。回りくどい言い方してどうしたんだよ。
「ちょっと!声が大きいわよ、周りに付き合ってるって思われたらどうするのよ!」
「なんでだよ。デートくらいで付き合ってるなんて思わねーよ」
「そ、そうかな。それならいいけど。じゃ、じゃあ放課後ね!」
何を今さら買い物くらいで気にしてんだよ。
だけど、付き合ってると思われるのは確かに照れ臭いかもしれないな。
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学校のチャイムが鳴り俺は一足先に校門で待っていた。
「お待たせ海斗。買い物いこっか」
学校を出てすぐ、前から歩いてくる女性二人と目が合った。
((何あの美男美女カップル!!ちょーお似合いなんだけど!!))
((あんなにお似合いなカップル見たことない!!))
まじかよ、本当にカップルに思われてるよ。
「ねえ海斗、なんでそんなに静かなのよ」
「お、おう」
やべ、変な声出ちまった。
「何よ変な声出してどうしたのよ」
「な、何でもねえよ」
早く用事を済ませて帰らねえとな。
俺たちは、足早に目的地に向かった。
買い物の場所って、デパートかよ。
よりにもよって人目の付く場所かよ。
「な、なあ優奈、目的地ってデパートなのか?」
「そうよ、期間限定の服がデパートにしか売ってないのよ。何、もしかして嫌だった?」
「別に嫌じゃねーよ」
しまった、顔を見て話しちまった。
((嫌だったのかな...。今からでもやめようかな。))
嫌な感情を読んじまった。
泣きような顔はやめろよな、もう。
「嫌なんて言ってねーよ。だ、大体嫌だったらデートなんかしねーっつーの...」
「ならよかった。でも最後が聞こえなかった、なんて言ったの?」
頬を赤く染めながら優奈は言っていた。
((やばいもう一回言ってほしいな))
このやろう、聞こえてやがったな。
「なんでもねーよ、それより早く行かねーと売り切れちまうんじゃないの?」
「そ、そうだった!早く行かないと!!」
優奈は走ってデパートの中に消えていった。
しばらくして、優奈はデパートから出てきた。
「どうだった優奈、目当てのものは買えたのか?」
「うん!付いてきてくれてありがとうね」
「よかったな。っていうかさ、俺ついてきた意味あったか?」
「た、確かに」
((意味はあったんだよ海斗君。私はね、こうやってあなたと話したり、一緒に買い物をしたり、一緒に帰ったりするだけで幸せを感じられるからさ))
なんでそんな嬉しいこと言ってくれるんだよ。まったく、こういうことがあるから俺は心を読めるようになった十数年、今でも平常心を保っていられない!!!
最後まで読んでいただきありがとうございます。