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歩く先には

歩いてみると、新たに幾つかのことに気が付いた。


まずひとつ。生命の気配がまるで感じられない。

鳴き声とか鳥の羽とか、そういったものが無い。もっと言えば、現時点で人間と思われるような文明の残骸さえない。陶器の破片だの、廃車だの。

ここに命は無いのか?


そんなことを考えていると、それを否定してくれるものが白い大気に紛れて現れた。


「うわっ………」

それは動物の骨であった。残念ながらそんなに詳しくないので四足の草食動物っぽいということしか分からないが、少なくともこの世界には生命が存在していたことになる。それは僅かな安心であると共に、言い様の無い不安を抱え込む切っ掛けにもなった。


再び歩き始める。

それにしても、仮に命が有るとして、この世界はどうしてこんなにも汚れているのか。

自分が生きてきた世界も大気汚染だ何だでどんどん汚れていく最中ではあったが、ここはその非ではない。

事実、先程から若干の頭痛と吐き気に苛まれている。このままこの空気を吸い続けていると、その内死ぬんじゃないか、等と思ってしまった。


不思議なもので、普段見慣れている景色が消しとんで未知なる世界に来たというだけで好奇心が収まらなくなってしまっている。

この世界の事を知りたい。

自分の生きていた世界の未来の姿なのか。

それとも、全く異なる何処かなのか。

先程まで死のうとしていた人間の考えることなのかとも思うが、その考えすら未知への興味に掻き消されてしまっていた。



……

この不思議な現象に遭遇して、どれくらい時間が経っただろうか。

彼方にぼんやりとしか見えなかった建物っぽい影は、大分くっきりとその姿を現していた。

どう見ても、建物だ。

むき出しになった鉄骨っぽいものや、電子看板の名残のようなものが見てとれる。

となると、それからわかることは二つ。

一つ。ここには人が居る、或いは居た。

いや、人かどうかはっきりとはしないが、それでも文明を持った生物が居たことは間違いない。

そしてもう一つ。ここは自分の知る世界ではない。

いつの間にか超常現象か何かによって時間がどうにかした可能性もあるが、どちらかというとそうではない、気がする。

要するに勘だ。


不意に、何処かから物音がした。

「………!」

声を掛けようとしたが、とっさに口を塞いだ。万一、ヤバイ生物が居たらどうするか。声をかけることは得策なのか。そう考え、ゆっくりと物音のした方に近寄って、様子を見てみることにした。


そっと、ゆっくり。

忍び足ながら急ぎに急いで、建物の影から物音のした所を覗いてみた。

暗がりだった。

電気の一つも点いていないかつて部屋だったのであろう空間は、目を凝らしても奥まで中々見えなかった。

もう少し身を乗り出して見ようとした。それが間違いだった。


「あっ………」

長い間汚れた空気を吸っていたためか、よろけてしまったのだ。

そのまま地面に手をつき、物音をたててしまった。

瞬間、暗がりの奥から、ごそりと大きなものが動く音がした。

慌てて僕は走り出した。

少しでもそこから離れるために。

だが、それを見てしまったとき、僕の身体は凍り付いてしまった。


それは、熊だった。

あまりに、大きい。

初めて見る熊に。助けてくれる人の無いという事実に。

一度死を覚悟した身ながら、動けなくなった。


熊は僕を見つけると、双眸をぎらつかせて走ってきた。

言葉にするなら、『恐怖』だった。

同時に、人生二度目の走馬灯を見ていた。

よくわからない世界で。よくわからないまま。突然殺される。

「あ……あ……」

微かに声が出た。それがどんなに僕に勇気をくれたことだろう。

指が動いた。手が、腕が、脚が。次第に動きを取り戻した。

それは勇気というより蛮勇だったのかもしれない。それでも。

「お……おおおおおおおっっ!!」

武術なんてやったことがない。熊の撃退方法なんて考えたことがない。それでも、生きたい、と強く願った。

それが、或いは奇跡を起こしたのかもしれない。


パン。

空気と同じくらい乾いた音が響いた。

目の前で、熊の頭部が吹き飛んだ。血飛沫が僕の頬にまで飛んできたが、何があったか分からなかった。

それでも、自分は助かったと緊張の糸が切れ、僕はそのまま倒れこんでしまった。

思っていた以上に疲れていたのだろう。

「…………、……。」

何か聞こえたような気がするが、残念ながら僕の意識はここで途切れてしまった。


瞼の裏には、未だに風景が残っていた。

歩き続けた果てに何れ程の絶望が有っても。


どうも、私です。

二話です。手抜き乙。

頭のなかで新しくできたネタはさっさと書かないと消え失せてしまうのです。無常。

最後に、この作品をお読み頂いた全ての皆様に感謝申し上げます。

ではでは。

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