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廃れた世界

いつもと変わらない、灰色がかった空。

幾筋もの飛行機雲が空を切り裂いている。一筋消えたと思うと、また一筋生まれるその空は、人間のせわしなさをまざまざと感じさせられる。


いつもと変わらない、人々の雑踏。

どこから湧いて出てくるのか、瞬く間に道路を覆うと、そこには流体めいた動きが完成する。右往左往などする余地もなく、人々は予め定めた目的地へと歩を進めている。


いつもと変わらない、白々しい程に眩しい太陽。

風が吹き抜ける場所にも関わらず容赦の無い熱を与えてくるそれは、白い材質のビルに乱反射し、地面を埋め尽くすアスファルトに吸収され、夜間でさえ人々を焼く。


そんな光景を眺めていると、己の人生の無為たるを、無意味たるを一瞬忘れられそうな気がしてしまうのは、上位的な第三者視点が人にもたらす何かなのかもしれない。

風にあおられながら、僕は自分の思考を嘲った。だからどうした、と。



僕は今、周りより一際高いビルの屋上に居る。理由は簡単、死ぬためだ。

結論から言うと、疲れてしまったのだ。この誰が決めたのか分からない、社会とか言うやつに。

生まれ落ちてから、社会のために生きろと言われてきた。自分のために生きろとも言われてきた。どっちが正しかったのかなんて、今はもうどうでもいい。ただ、矛盾だらけの世界に嫌気がさした。

理由なんて、そんなものだ。


眼下の世界を見下ろす。

人々は知らず知らずに蟻となり、せかせかとその命を消費する。生命の営みと言うのはどこをとっても代わり映えなんかしない。実につまらない人生だった、と心の深奥で呪詛の様に吐き散らした。

そこに命は無かったのだ。


僅かな死への恐怖を飲み込み、一歩。支えのなくなった身体は宙へ投げ出され、より重い頭を下に、みるみるうちに地面が迫る。

終わりだ。全て。

生まれ変わることが有るなら、人間以外で在りたい。

そう祈りを残したまま、僕は―――


ぼくは………





……

………


不思議と痛みを感じることは無かった。


ただ、大きな何かにそっと包み込まれるような感覚だけがあった。


死とは思ったより苦しまずにすむものだった様だ。


謎の心地よさが残る。


ただ、その精神的な心地よさとは別に、妙な息苦しさが残っている。

人生から解放されたはずなのに、なぜこうもわずかに、それでいて明確な苦しさがあるのか。

等と考えていると、突然の寒気が襲った。

余りにもリアルな感覚だった。

色々おかしいことに気付いたのはこのときだった。


何故、僕の思考は続いている?

何故、痛みが少しも無かったのか?

何故、こんなにも息苦しさを感じている?

これではまるで、生きているような―――



「………ッッ!?」

覚悟を決めて目を開く。目の前に広がったのは灰色の空。

何があったのか、さっぱり分からなかった。

何かの要因で助かったのか、と思ったが、すぐにそれは違うと直感した。

自分の見上げる空が、余りにも広い。井戸の中から見上げるようなかつての空ではない。つまり、周りからビル等の高層建造物―――だけではなく、人までもが姿を消していた。

天国なのか。それは恐らく違う。天国と言うには廃れすぎた世界だった。美しさを見出だすことも、安寧に浸ることも出来ない景色だった。

地獄なのか。それは分からなかった。地獄と判断できる材料は現時点では無いが、草木の無い地平はそれを彷彿とさせた。


まず、自分が今どういう状態かを知りたかった。

身体に痛みや不調は感じられない。両手をついて上体を起こすと、殺風景は彼方まで続いていることに気付いた。

次に、両足に力を込めて、立ち上がった。倒れていた所に血の一滴も無いところを見ると、怪我は無いらしい。五体満足だった。まるで意味は分からないが、とにもかくにも自分は生きている、ということが分かった。


次に、どう動くべきか悩んだ。周りの景色を見れば分かるが、ここは明らかに自分のいた場所では無かった。

それは分かるのだが、どうすればいいかさっぱりだった。取り合えず、辺りを見渡してみたところ、遠くに建物の様なシルエットが、霞む空気中に紛れて見えた。そこを目指して歩こう。


こうして僕は、この錆色の世界を歩き始めた。

この世界を生きる覚悟はあるか。


どうも、私です。

他に書いてるのが飽きたんでちょっと別なのを書いてみます。

先に言っときますと、今の社会の憂鬱さにうんざりしてる方はこれ以降の閲覧をお控えくださった方がいいかも知れません。

そんだけです、はい。

最後に、この作品をお読み頂いた全ての皆様に感謝申し上げます。

ではでは。

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