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予約日ミスっていました。
すみません(汗
僕は現在大型犬を連れ立っておりますが、お散歩と言うわけではございません。悪しからず。
やってまいりました、騎士団訓練所。
入り口で名前を言うと、入ってすぐの半室内の様な場所で待たされ、案内人が来てからその人の後についていく。
ニコラウスは知り合いだった様で、「お久しぶりです」と挨拶を交わし合っていた。
今は、隊ごとに日々のトレーニングメニューをこなしているのか、走っている集団や、型の確認をしている集団と様々だ。
それを眺めるだけでも、ちゃんとこなそうとしているか、気が抜けているかが分かる。
騎士団訓練所の団長室に通されると、応接セットが左側にあり、部屋の中心、窓側には大きく重厚感のある机の向こう側で、退屈そうに書類を片手に持って眺める騎士団団長が座っていた。
僕たちが入室するや否や書類をぺぃっと机に投げ置き、笑顔で出迎えてくれる。
え?その書類……良いのですか?と内心で驚きつつ、挨拶を交わし合った。
「ちょうど良い時間だ。これから打ち合い訓練がある。候補の奴らも居るから見にいこうっ」
「え、団長も行かれるのですか?」
「偶には稽古をつけてやらんとなっ」
話しながらも立ち上がって上着を肩に掛け、最後には僕たちをクルッと回転させると、背中を軽く押しながら部屋から出た。
出る直前に補佐官と思われる騎士が、紙束を抱えて慌てて引き留めようとしていたので、予定外の行動なのだろう。
………補佐官殿、強く生きるんだぞっ
訓練施設の中でも、一番大きいとされる訓練場では、模造剣で既に打ち合いをしている者もいて、活気があった。
騎士団長はこの風景が好きなのか、慈愛に満ちた眼差しでゆっくりと見回していた。
「ここにいる者は皆、一定以上の現場経験のある騎士です。奥の集団が、推薦した者たちですな」
集団の一角を指して言うので、その方向に目を向けると、確かにこの中で剣筋のキレが違って見えた。
ニコラウスも分かったのか、その集団に目を向けて頷く。他にも探す様に目を走らせてはじっと見るを繰り返していた。
少し時間を置いてから、団長は胸いっぱいに空気を吸い込んだかと思うと、腹の底から響く様な大声で集団の注意を寄せた。
「皆、集合ーーーーー!!!これより、指名した者の1対1での打ち合い訓練を行ってもらーう!装備を確認して前に出るようにー!ではーー…」
他の騎士は、団長の号令と共に後ろへ下がり、一緒に観戦する様で、皆それぞれ見える位置に広がっていく。
打ち合いはさすがと言うべく、綺麗な剣筋に切り返し、踏み込みの力強さや俊敏さに目がひかれた。
5組ほど打ち合いを見た後、ニコラウスが観戦組から何人か指差しで指名して、打ち合いを見せてもらった。
そして最後にニコラウスが指名したうちの1人と直接打ち合いを申し出た。
それを団長は片眉をあげて、ニコラウスに問う。
「お前がか?まぁ良いが、解したのか?」
「勿論です団長!朝の鍛錬も欠かしてはおりませんし、是非やらせてください!」
息子のキラキラとしたお願いに、口を引きむすんだが、「まぁ良いか」と言い、すぐに装備をつけさせる様に団員達に指示を出した。
準備を整えたニコラウスは、相手の前に進み出ると、団長の様にお腹に力を込めて皆にも聞こえるように発声した。
「皆様の腕をこの手で実感したく、不躾な願いを言い申し訳ありませんっ。お付き合いいただけること、感謝いたします!」
そういうと、勢い良く一礼して見せた。
周りから、虚を突かれた様に、一瞬の静けさが訪れたが、そこ彼処から「団長に似て熱いな」という感想と、温かな笑い声が溢れ出した。