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 夜にトビーから無事合流の知らせをもらい、僕は安堵のため息をついた。


 その後のトビーの報告から、バルド殿下の状況を知った。服は装飾をほぼ取って売ってしまった上、旅で薄汚れた状態だったとのこと。服もこっちで売り払った後は街をふらふら見物しながら王城を目指すつもりでいたらしい。

 そんな姿で『俺は王族だ』と言われても、悪くて門前払い。よくて半信半疑で確認させるために足止めするくらいしかできないだろうに。

 むしろよくやったよ門兵諸君。ハリソン殿下から恐らく連絡は行くだろうから、明日には安心して通常業務に戻ってほしいと思う。


 何とも逞しく考えなしな王族だろう…と遠い目になる。これでは閉じ込めてしまいたくなる気持ちも、わからなくは無いな。


 これからの指示として、赤髪の彼の服装を整えさせ、馬車と護衛をつけて王都観光にでも誘い出すようにトビー経由でレイへ伝えた。



 ***


 翌日僕は報告にやってくると、ハリソン殿下は渋い顔をしていた。



「本当に単身でやってくるとは………」



 僕はその意見に激しく同意する。ハリソン殿下は、僕の隣に立つニコラウスに話しかける。



「以前提出された警護プランを、少し加筆させてもらった。そのプランでウズヴェリアの第3王子バルド殿の警護を騎士団から選んで編成を。私が許可を出すまで密命として動いてくれ。出来るか?」



 そう言って執務机の上にあった紙を、ニコラウスにスッと滑らせると、喜びに顔を輝かせた後、キュッと引き締めて硬く頷いた。



「はっ。必ずや、完遂致しますっ!」



 ニコラウスは、執務机から紙を取ると、しっかりと抱えて一礼をした。そして僕に顔を向けると、目をしっかり合わせ、鼻を膨らませてシッカリと頷き、そのまま下がっていった。


 扉が閉まると、ハリソン殿下は「しっかりとした忠犬に育ってしまったな」と呟いていたが、聞こえないふりをしてやり過ごし、話を進めておくことにした。



「城へはどのように迎えますか?確認も早くても、後5日はかかるでしょうし」

「どんな様子だ?」

「付かせているものからは、リラックスされているご様子で、周りのすべてに興味を示しているご様子だと。一応馬車で王都を目指して進行中ですが、度々止まってはその者を連れ回しているようです。

 この分だと連絡がこっちに届くのと、殿下が到着するのは同時かもしれませんね」


「そうか。まぁ都合がいい。騎士の編成も打ち合わせや場所の確認も入れば、余裕があった方がいいだろう」

「後の問題は、プランティエ殿下との顔合わせですね」



 眉間のシワを一層濃くしてハリソン殿下は、ため息をこぼした。



「父上と母上に相談して考えよう。これは流石に私の手に余る」

「そうですね、陛下から仰って頂ければなんとか…」

「「ううむ………」」



 良いイメージが浮かばない僕たちは、良い案も出ず、呻くような声が溢れるばかり。

 打開策を探すべく、僕はプランティエ殿下の近況を尋ねた。



「最近プランティエ殿下のご様子は如何でしょうか?」



 僕が切り出すと、ハリソン殿下は頬杖をついて、窓の外に目をやり答える。



「あれから反省の意味も込めて宮に籠もって居るが、もう誰彼構わず呼びつけては騒いでいるよ。この間は、“ファッションの考察”という名目のサロンだったか?頭の軽そうな子息令嬢が群がっていたな」

「それは…………なんとも………」

「今日も何かしら集まっていると聞いたが、もう何かを開かせる気はないので、静かにお茶でも飲んでいるのでは無いかな」



 2人はそんな軽い想像が悪い方向に裏切られるのを感じながら、緩く頭を振り合うのだった。


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