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65/110

65*エミリー視点

*ヒロイン視点

読み飛ばし可

 ハンカチを拾ってもらってから、毎日顔を合わせる度に挨拶をする。

 1週間を過ぎたら、お天気の話とか、ちょっとした話題を振るのが良いのよね。


 チャールズにもう何度か話しているのに、まだ返事を返してくれないんだよー。

 そろそろ「そうなんだ…俺は」って少し照れながら返してくれるはずなんだけど。


 それにしても、モブってば自由に動き過ぎじゃない?

 もしかして、ルートが塞がった攻略対象はイベントが出ないようにするとか、そういう“システム”なのかなー??


 エリオットルートは授業中についつい目が合って、逸らされたりするはずなのに、隣にいっつも付いている、貴族役のモブにばっか顔を向けるから、全然目が合わないしっ!

 なんなのあのモブ子Ⅱは?!


 あーダメダメっ落ち着かなきゃ。

 まぁ、エリオットルートは「ダンスイベント」で様子見かな?それでダメなら攻略失敗確定だもんね。あーあ、何にも興味のない無機質な世界で生きるエリオットの溺愛ルート見れないかなー?無理かなー?


 今は地道にチャールズルートの扉を開かなきゃ!

 エリオットルートと同じ悪役令嬢のフランシーヌが、義姉として出てくるんだよね。


 蛇蝎の如く嫌って、虐め三昧。ワンコ系チャールズは最初こそ、心を閉ざしているんだけど、私と出会って、貴族になる前の平民の生活を送ってた頃の気持ちを思い出して、自由を手に入れて、やり手の商人として世界に羽ばたくのよね。私と一緒に!


 セレブな世界旅行とか、いいかも〜〜☆


 よし、根気よく挨拶するぞ!ってあれ?なんか目が全く合わなくない?ん?あ、照れ始めたとか?じゃ、もうちょっとかなー?


 ***


 そして私の嫌いなマナーの授業。


 で、今日はお茶会が課題なんだけど、チャールズは周りの貴族に「下賤の出の貴方が給仕になるのが当然では?」って押しつけられちゃうんだよね。ヒドイっ!

 これもそれも義姉である悪役フランシーヌが、チャールズを「妾腹」って言って嫌っているせいで、周りも助長したというのが発端なのよ。


 あ、やっぱりチャールズがホスト位置に着くみたいだ。さぁ、待ってて、貴方のヒロインが助けに行くわっ!



「まぁっチャールズ様、押しつけられたのね?良かったら私、代わります。あ、そうすると席が足りなくなっちゃうわ。あなた他のところへ行ってくれる?」



 私をいつもセーブするモブ子に言えば、エリオットルートのイベントじゃないし、どっか行くわよね?



「さぁ、わたしに任せて?」



 ついでにチャールズ、エリオット、マティアス殿下に触っとくか〜!ご褒美みたいなもんよね?


 って、手を伸ばしたら、横から出てきた扇子で手を遮られた。やだ、優雅〜ってそうじゃない。

 扇子で遮った本人を見るとモブ子Ⅱじゃない!なんで?関係のないモブ子Ⅱが?!



「おやめなさい。失礼でしてよ」

「なっあなたには関係ないじゃない。私がホストなんだから、オモテナシするのは私の役目よっ」

「横から入ってきただけではありませんか。貴女にホストをお願いした覚えはないわ。それに、知り合いでもない男性に無闇に触れるのはマナー違反でしてよ」



 なによっこのモブ子、入り方までセーブするプログラムなの?!とりあえず言い訳しなきゃ、バグって可能性あるもんね?



「他人じゃないわっクラスメイトよ!それにチャールズ様とは“お友達”なのよ!」



 チャールズに、「そうよね?」って目を向けると、否定するように横に首を振っていた。



「違うそうだけど?」

「そんな、チャールズ様っ!毎日お話ししてるじゃない!」

「一方的な挨拶だけだよねっっ誤解を招く言い方はやめてくれ!」



 え?まだルートに入ってなかったってこと?!返事くれたし、反応してたし、イベント発生条件は揃ってるんじゃ?!



「でもっでもっ」

「お下がりなさい」



 モブ子Ⅱのシステム判定はNGだったのか!うわーーん厳し過ぎて「ヒドイっ!」あまりのルート解放条件の厳しさに泣けてきて、外へ飛び出しちゃってた。


 ***


 あーあ、もう、チャールズルートもダメなのかなぁ?セレブ旅行が……

 シュンとしながら、講堂の先の運動場近くの渡り廊下まで来てしまった。


 そしたら後ろから声がかけられて、びっくりしちゃった。



「クラスター嬢。こんな所でどうしたんだ?それは…濡れてしまったのか?」



 あー、さっき引っ掛けて濡れちゃったんだよね。足につくと冷たいから制服の裾を掴んで離しているんだけど。



「あ…これは…」



 イベントに失敗してっていうのもねぇ?



「それは……誰に?」



 ああ、イベント失敗で走った時にやっちゃっただけなのよー。



「あのっちがっっ、これは私が悪いんです……」



 胸ポケットから真新しいハンカチを差し出してくれたニコラウスが、心配そうな顔していた。



「よかったら使ってくれ。少しはマシになるだろう」

「えっ、そんな。でもありがとうございます。今日はお天気も良いから、きっとすぐ乾いちゃいますよねっ」



 ニッコリ笑ってそう言ったら、ちょっと頬が赤くなったニコラウスに、ビジュアルが良いから照れても様になるわ〜って眺めちゃった!



「いつでも力になる。いつでも相談にきてくれて構わない。クラスター嬢」



 お、コレはほぼ攻略完了のお知らせじゃない?!お願い事してみようかな!



「あ、じゃぁ…エミリーって呼んでもらっても良いですか?」

「それは…分かった。エミリー嬢。俺のことも名で…ニコラウスで構わない」

「はい、ニコラウス様!」



 きゃー!攻略対象から、名前呼びボイスとか最高っっ!じゃぁ、また一緒に中庭でランチとか誘わなきゃ!キープよキープっ、頑張ろーっと!


***


 ニコラウスとの時間を頑張りつつ、次の「ダンスイベント」と「お手伝いイベント」まで待たなきゃ。


 他のルートはもう無理かなー?


 中庭の片隅で隠れるようにベンチに寝転がって、思い詰めたような瞳で空を見ている筈のマティアス殿下は見当たらないし、授業に出たらすんごい真面目に授業受けてるし。

 孤高の王子、ハリソン殿下も別の貴族役のモブ子Ⅲとよく一緒にいるし、そもそも近衛騎士が無闇に近づけさせないよう見張ってるから、すれ違って肩が触れ合って謝るプチイベントも起こせそうにないじゃない。


 あっちこっち行って疲れて戻ったら、授業はじまってたり、下手したら終わってる何てこともある。無駄に広すぎるこの学園が悪いんだー!


 あと、好感度をキープしたままずっといるのも大変なの。ある日ニコラウスが、熱のこもった目で黙って見てきたの。


 あ、コレやばいやつだと直感が言っていたわ。



「私…いや俺は…エミリーの事が気になっているみたいだ」


 こういう時はヒロインあるある……



「え?なぁに?何か言った?」



 はいっ秘儀“聞こえませんでした”!どやぁぁぁ!


 正直言って、バーっちり聞こえてるし。

 けどまだ他のルートも開放するかもだし、今はまだ答えられないのよね〜。


 ごめんね、ニコラウス?

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