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 学園祭の内容も決まり、学園の新しい行事について、全生徒を集めて正式に発表と説明をした。


 学年より1名ずつ代表を選出して、実行委員に任命する旨と、学年ごとに役割を振り、それぞれ実行委員に協力のもと小さな事でも良いので、参加するようにと伝えた。


 選出には2週間ほどかかったが、1名ずつ選出され、担当を決めていった。


 3年は農業科と公演の管理、賓客対応

 2年は織布科と工芸科

 1年はチケット管理、案内などの広報と構内の装飾


 1ヶ月も過ぎる頃、なんとか動き出した“学園祭”に、生徒会一同ほっとしたのであった。


 実行委員会を含めた会議では、学年ごとの仕事の洗い出しや、補佐の任命は可能か?などの相談など諸々を行った。


 実際に研究成果や開発された製品については翌月アカデミーの各科の責任者や研究員数名を呼んで、直に触れてもらうこととなった。


 ***


 会議が終わり、僕は2年の実行委員に声をかけた。



「ブロウズ嬢、お時間よろしいでしょうか?」

「はい、構いませんわ」

「…実は、服飾での発表の件なのですが、製作案は出来ており、後は候補から選ぶ段階でして」

「まぁ、そうなのですか?新しい生地を使った服飾の発表なんて、女性としてはワクワクしてしまいます」


「ただ、デザイナーは孤児院出身で、お店を出したばかりの子らと、孤児院にまだ入っている子でして。

 ブロウズ嬢が気になるようでしたら、人を介しますがどうしますか?」



 僕の言葉に目を瞬かせたブロウズ嬢は、次の瞬間には微笑みを浮かべて答えた。



「デザイナーと実際お話しして、作品作りに関われるのでしょう?誰にも譲りませんわ。

 何処から生まれようが、私はその人の才能に敬意を表します。()()()()()()()()は無用ですわ」


「それはよかった。その孤児院が私の婚約者が管理するところでして、一度顔合わせをしておきたいのですが」

「それは是非。孤児院の管理をなさっているなんて、素晴らしいですわ。デザイナーの卵にも直接会えますの?」

「ええ、それはブロウズ嬢が宜しければ」



 話が纏まったところで、顔合わせの日程を決め、会議室を出ようとした。


 ふとブロウズ嬢の足が止まり、じっと何かを見つめていたので気になり、先に目を向けるとニコラウスがいた。



「?ニコラウス殿とはお知り合いで?」

「ええ、まぁ。…婚約者ですわね」



 僕は驚いたが、声と顔に出ないように必死になった。「居たんだ」と喉から滑り落ちそうだったのだ。

 そういえば一度、同年代で婚約者が居ない人を確認した時に、プロバースド家はリストになかった。



「それは…………存じ上げませんでした」

「まぁでも、変わる可能性の高いものですので、お互い決定するまでは不干渉ですわ。お気になさらずに」

「そうですか」



 突っ込んだ事情を聞けるはずもなく、会議室を後にしたのだった。


***



 その夜、自室にて。



「え?正式じゃない?」

「はい。といっても家同士の結びつきは絶対に成したいそうで、“家”の婚約者ですね」

「つまり、ニコラウス殿が無事家を継ぐと確定した場合に、婚約者になる…と。

 そうか、騎士団長の家だからな。家督を継ぐのは一番強く秀でたものと聞いたことがあったな。次男は何歳だ?」

「現在10歳ですね。その下は娘で8歳です。噂によると、次男は既に才覚を発揮しているそうです」


「噂で“既に”か……ニコラウス殿、危うさには気付いているんだろうか…」

「それがその……お気づきじゃないかも知れません」

「だろうね。僕、まだ彼を気にしなきゃいけないんだろうか」


「殿下に確認なさっては?」

「だよね。殿下のお考えねぇ」



 騎士団長の息子として鍛えてきた分、そこそこ強くはあるが、近衛騎士と比べるとまだまだ相手にならず、自ら鍛錬に励んでいる。


 そして側近候補に選ばれたところで、傲ってしまったのかも知れない。

 ニコラウスは一見、順風満帆のように見えるが、内実2年経った今でも彼は“側近候補”のままだったりする。


 その内何かしらの役職に就くとしても、今のままでは次男の方が有力ではなかろうか。

 覆す方法を考えたが、2年もお側に侍ってこれと言った実績がない今、頭を抱えるしかない。


 僕はただただ、ニコラウスのために祈ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニコラウスのために祈る主人公、やさしいな、と感じてしまう。。 数年の同僚的な付き合いにしては、人としての情がありすぎる感じが。 このままだとヒロインがらみのトラブル起こしてしまいそうなニコラ…
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