表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/110

40

 伯爵家での一時を満喫して、名残惜しげに後にした僕は、その足で王宮へ向かった。


 そろそろハリソン殿下が学園から戻ってくる頃なので、仕上げた書類を持って行くのだ。


 第一王子ハリソン殿下の執務室に入り、中に進んで…身を翻した。



「おっっお待ちになって!」



 僕は扉に向かう足を止めて、ゆっくりと後ろの応接用ソファに座る方々に向き直った。



「ご機嫌よう、ハリソン殿下。そしてキャロリアーナ嬢。出直しますから気にせずそのままで」

「気にせず入ってくれ」

「気にしますわ!!お離しになってくださいましっっ!」



 この2人、あれだけ疎遠だったのに今では溺愛っぷりが凄い。


 お互い徐々に距離を詰め、あまりのじれじれっぷりに、その相談会に面倒くさくなった僕は、孤児院出身のお針子にお願いして、猫かリスのような小動物の付け耳製作を依頼した。

 小動物のような人物を、つい弄ってしまうハリソン殿下の癖を刺激してみよう!な作戦だ。


 そして試行錯誤の上、出来たのが猫耳付きカチューシャ。しかも長毛種。なんと画期的か。


 ハリソン殿下の前でキャロリアーナの頭にそっと付け、えーいと後ろから押してみたのである。

 それからの殿下はキャロリアーナ嬢を見ると、とりあえず腕に収めてニコニコニマニマと愛でている。


 僕も反省はしている。

 いくらなんでも荒療治が過ぎたのだと。

 しかし、後悔はない。

 将来の国王夫婦が仲睦まじくて何よりだ。



「貴方ね!さっきから景色ばっかり見ていないでっ…!あっ殿下!くすぐったいですわ…!」

「……殿下。補充はそろそろ良いのでは?股の間に座らせて弄っているキャロリアーナ嬢を、隣へ移動しては?僕はどーでも良いのですが、彼女の体面上よくありません」

「うむ、そうか。仕方ないな」



 渋々と言った体で、横へ座らせたハリソン殿下。ぴったりとくっついて腕を回しているので、あんまり変わらないような気が…まぁ良いか。気にしていたら負けだ。仕事が進まない。



「こちらが提案書です。後は校内での企画案ですね」

「有難う。やっと場が設けられそうで何よりだ」

「そうですね。去年は間に合いませんでしたから、僕も一安心です」

「内容をお聞きしても宜しいのかしら?」


「ああ、まだ準備段階だが、校内でお祭りをしようと考えていてね」

「と言っても2学期中盤なので半年はありますよ」

「まぁ、校内で?」


「生徒会主導で、実行委員会も別で作ることになるかと。キャロリアーナ嬢ももちろんお手伝いしていただきますよ」

「面白そうね、もちろんよ。今から提案してもまだ間に合うのかしら」


「一度アカデミーの方も行くので、そこで素材を見てという流れですね」



 ハリソン殿下に肩を抱かれたままだが、キャロリアーナ嬢は初の行事、それも立ち上げから全て関われることに目を輝かせている。


 そして他の案件の話を進めていると、ニコラウスが入室してきた。



「遅れまして申し訳ございません」

「いや、いい。何かあったのか?」



 ニコラウスも慣れたもので、目の前の光景にはさして態度を変えずに話を続ける。



「いえ、先ほど学園の警備担当から報告を受けまして。新入生が正門に押しかけてきたと。それ以外は特に異常なしでした」

「数年に一度はあるそうですね。下見だと言って来る人。気安く入れるはずないのに」

「入寮される方は寮専用門に来られますから、入寮者じゃないのかしら?」



 王都の王城近くにある王立学園は、希望する入学者に限り、寮を提供している。

 貴族は1人1室。平民は2人で1室。男女で棟が分かれ、階数で身分を分けている。


 学園の敷地内にあるのだが、街へは専用の門があり、新規入寮者はそこから荷物を持って入ってくることになっている。


「わかりやすく標識もありますし、間違っていたら門兵が説明するでしょうし、大丈夫でしょう。ところで、そろそろマティアス殿下はお戻りに?」

「ああ、明日帰ってくる。ウズヴェリア国の手土産と一緒にな」


「それは楽しみですね。明日は僕も手土産を持って顔を見せに行きましょう」

「お土産交換ですわね。楽しそうですわ」



 まぁキャロリアーナ嬢はハリソン殿下が離さない気がするので、マティアス殿下を連れて来ようと心に留め置いたのだった。

お久しぶりなマチュ...ゲフンゲフン

マシュー君は羽ばたいておりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ